デジタルトランスフォーメーション研究所

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緊急事態宣言後のハイブリッドな新しい生活様式

緊急事態宣言、蔓延防止重点措置が解除

 緊急事態宣言、蔓延防止重点措置が解除されて、ほっとされている業界の皆様は多いことと思います。また、久しぶりに仲間で集まって飲み会を企画しようという方も多いことでしょう。コロナ禍については、まだまだ予断は許さない状況ですので、十分感染防止対策をした上で活動再開したいものです。

 ここでまず注意したいことは、人間らしい生活に戻ることと、アナログに戻ることは同じではありません。たしかにコロナ禍でデジタルシフトが進みました。しかし、これをコロナ禍の災厄=デジタルを無理に使うことと関連づける構図で捉えるべきではありません。デジタル技術を活用したことは、今回の災厄に対処するために、たまたま第四次産業革命の初期の部分が加速したにすぎません。アナログに戻ったところで、変異型ウィルスや他の災厄により自宅から出ずに生活しなければならない時代は、またきっと繰り返し訪れます。過去に引き返すことはできないのです。

オンライントランスフォーメーションの恩恵

単なるオンラインシフトでは、従来の価値の多くが消え去り不便なだけのサービスとなる

単なるオンラインシフトでは、従来の価値の多くが消え去り不便なだけのサービスとなる

 コロナ禍において、アナログではできなかったことをデジタルで出来るという実感を得た方々も多いのではないでしょうか。イベント1つとっても海外の登壇者を簡単に招いたり、どれだけ人数が多くても会場のキャパシティで参加者を制限する必要がなかったり、リアルタイムに参加者アンケートをとったり、ゲームで盛り上がったり、集計したり、受付が不要だったり、移動時間が節約できて参加しやすくなったなど、様々なことが挙げられます。これらのオンライントランスフォーメーションを実感すると、アナログイベントに戻すことを躊躇する方も多いのではないでしょうか。

 逆にオンラインで不便さしか感じなかったという方がいるとすれば、それはオンラインシフトをしただけで、ネガティブな面しか感じなかった方と言えるかと思います。

参考記事)オンラインシフトとオンライントランスフォーメーション

 実際にコロナ禍が終了しても、テレワークを続けると宣言している企業も増えていることから、オンライントランスフォーメーションの価値を組織をあげて実感できた企業も多いのではないかと思います。ただ、ここでオンライントランスフォーメーションを続ける企業と、アナログに一目散に戻る企業では、10-15年後に取り返しのつかない大きな差になることは言うまでもありません。

ハイブリッドの試練

 もちろんアナログという現実社会ならではの良さもあります。そのため、アフターコロナにおいては、このようなアナログとデジタルの共存が求められる場面は多いかと思います。しかし、イベントやビジネスをデザインする側としては、すべてをアナログで設計することや、すべてをデジタルで設計することに比べて、ハイブリッド(アナログとデジタルの共存)で設計することが圧倒的に難しいのです。先ほどのイベント1つとっても、フルオンラインで開催できたので、従来のアナログ開催とのハイブリッドはそう難しくないように感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、人間は現実空間に集まった瞬間に、現地にいる人を見て話をします。たとえ、カメラの向こうにより多くの人がいたとしてもです。会場全体の音声を参加者の質問なども含めてオンラインに流すことも様々な工夫が必要となります。集音マイクを設置しても、集音マイクの近くでの物音はオンライン参加者にとって大きな苦痛となります。会場だけが白熱すると、当初オンライン側にも資料共有していたはずが、共有していない手元資料を見せて会場で熱弁をふるってしまっている場合もあります。このような事象が発生した際に、オンライン参加者には会場全体の様子は見えないことが多いので、今何かの説明をしているけど、ひょっとしてその資料はオンライン参加者の自分たちには共有されていないのではないかと気づき、騒ぐなどのアラートを出し、やっと主催者側が気づいたころには、現地参加者とオンライン参加者の間で大きなギャップが生じています。このようにフルオンライン時代はオンライン参加者だけのことを考えて設計されていたイベントが、ハイブリッド(デジタルとアナログの共存)になった瞬間、オンライン参加者にとってクオリティの低いものになってしまいがちで、これらを避けるためにはかなりの機材や準備、マンパワーが必要となります。

 これらの問題の発生理由はすべて人類にあります。人類のアナログ世界での行動様式を引きずっているからです。デジタルで最適化された社会になるには、まだ十年から数十年かかると思いますが、それまでの間のハイブリッドな時代(仕組はデジタル化できるが顧客や市場や働き手である人類がアナログ行動様式を引きずっている)が続きます。このハイブリッドな時代がすべてにおいてもっとも設計が難しく、しかもステージ毎に提供するべきサービスの在るべき姿、事業のあるべき姿が異なってくるわけです。

第四次産業革命

 このような社会や産業全体のハイブリッドな過渡期を「第四次産業革命」と呼びます。一般的には、一連の変革(トランスフォーメーション)のステージが終わると、社会は安定期に移りますので産業革命は終了したと考えるべきでしょう。ただ、すべてがデジタル化すると、超高速PDCAが人類の叡智を超えた速度で繰り返され、変革が常態化することも予想されますので、今回の産業革命がある意味最後の産業革命になる可能性があります。

参考)第四次産業革命とは何か

人を理解しなければトランスフォーメーションは成功しない

人とデジタルがつながる新しい時代へ

人とデジタルがつながる新しい時代へ

 オンライントランスフォーメーションにしても、デジタルトランスフォーメーションにしても、このような過渡期ならではの提供価値やサービスのあり方を設計し、どのように移行してゆくべきかを真剣に考えるところから始まります。つまり、フルデジタルで設計するのではなく、顧客、市場、働き手が引きずっているアナログ行動様式をいかに観察し、理解するかが重要となります。つまり、DXの成功のためにはデジタルテクノロジーの知識はもちろんのことですが、人類の行動様式の理解が欠かせないと言えます。

 さあ、ハイブリッドな新しい生活様式がどのようなものになるか、ワクワクしながら想像していきましょう。きっと新しい価値提供の形がたくさん見つかるのではないかと思います。

(荒瀬光宏)

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