デジタルトランスフォーメーション研究所

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「より良い生活」のための自治体DXを vol. 01

当社は2021年12月に、自治体DX調査報告書を公表した。日本経済新聞に掲載されたこともあり、当社ホームページへのアクセス数や問い合わせ数も急増した。また各種SNS等でも、「自治体DX」に関連する投稿も徐々に増えつつあり、世の中的にもその必要性について声を上げられている。他方、各自治体においても「DX戦略」が策定されていたり、中央省庁においてもデジタル庁、総務省、経済産業省などを中心として関連した政策が行われている。さらに岸田内閣総理大臣の年頭所感でも「デジタル化」を成長のエンジンにする旨が述べられた。

政治と行政、自治体、民間企業、学術機関、市民団体、そして国民一人一人で共創して、より良い社会の実現に向けて取り組みをしていかなければなりません。岸田政権では、デジタル田園都市国家構想として、社会のDXと地方創生の実現を目指している。これらの実行していく際にも、やはり自治体のDXは必要不可欠であり、当社が公表した本報告書もその大きな流れに寄与できれば幸いだ。

自治体DX調査報告書

今後、数回に分けて自治体DX調査報告書を実施するに至った背景と、その分析結果などをご紹介したい。

本報告書の役割と分析のスコープ

 本報告書は、自治体におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進捗確認、それぞれの現状把握、あるべき姿と現状とのギャップの認知、必要なアクションの検討材料とすることを目的としたものである。エリック・ストルターマン氏(当社エクゼクティブアドバイザー、インディアナ大学教授、上級副学部長)が2004年、論文「Information Technology and  the Good Life」(2004, Umeå universitet)で提唱したDXの概念に基づき、民間と公共の両輪で社会全体のDXが進展、国民の満足度が向上され、「より良い生活」が実現されることを目指した。また、少なくとも2001年以降の国民の公共サービスに対する満足度向上を目的した各種の政策や戦略、計画から学び、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(2020年12月25日総務省公表)等の進捗確認を行った。(株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所、『自治体DX調査報告書』、2021年)

  • 公共セクターにおけるDXは、法整備やルールメイキングの機能を有しており、民間と社会全体に与える影響が非常に大きい

    • スタートアップやベンチャー企業などが最新技術を用いて社会貢献を試みる際に、その技術や活用方法、世の中の流れを理解できない公共セクターなどによって法整備が遅れたり、逆に厳しく規制されたりしてきた。

  • 自治体は、住民との直接的な設定を有しており、国民が享受すべき行政サービスの質を高め、国民の満足度を高めることが求められる

  • 行政のDXは少なくとも01年のIT基本法の施行やe-Japan戦略の策定から始まっているが、それぞれの具体的なマイルストーンの設定や進捗確認がされてこなかった

このような理由から、まず「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(2020年12月総務省公表)の進捗確認を行うこと、それらを社会全体のDXを推進していくことを上位目標して、民間セクターとの比較を行うこと、それらを分析することで、具体的なステップを検討していく材料とすることが役割である。

本調査を実施した背景・狙い

  • 各自治体によるDXの本質的な理解なく、手段の目的化されたDX戦略が多く見受けられ、更なるベンダーロックインや非効率な予算消化の可能性があるため

  • 各自治体の出来ない理由を探り、国と自治体の役割分担を明確化し、国がやるべき施策に関して政策提言を行うため

  • 各自治体ごとで比較を行うことで、現状を的確に把握してもらうため

  • 進捗度合いに関して、人口や産業構造などの特徴と相関分析を行い、その背景を把握するため

    • 結果として、国がやるべき施策に関して政策提言を行うことができる

    • さらには、地方創生やスマートシティなど他国家構想などとの掛け合わせも実現できる可能性がある

筆者が本調査を実施する上で、主に重きを置いていたのは、上記の点である。国家のあり方や社会、経済のあり方の変化が求められる中で、「より良い生活」のために上記の点は重要であると考えているし、更なる検討と実行力の強化が求められる。01年以降の我が国におけるデジタル化に関連した国家戦略を振り返り、その本質的に変化し得なかった理由を正確に捉える必要がある。それが国家の制度そのものなのか、行政における人事制度なのか、首長の年齢なのか、などさまざまな言論はあるものの、確固たるエビデンスを得ることは難しい。ただ少なくとも、傾向を捉え、検討し、少し少しでも前進している感が国民の間で醸成できなければ、うまく機能しないのではないかと危惧している。

今まさに、社会全体のあり方を検討しなければならい。グローバル化によって世界が近くなり、情報化によって人々が繋がった。止めどなく変化する環境にあって、変化し続蹴ること、変化させてはならないこと、この二つを考えつつ「より良い生活」のために、何ができるだろうか。

自治体DX調査の分析結果などは次回以降、掲載していくことにする。

自治体DX調査報告書

(白石陸)

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