グローバルに事業を展開し、化学品・食品・ライフサイエンス分野で人々の暮らしを豊かにしてきた株式会社ADEKA。
同社は2024年度、中期経営計画「ADX2026」の中核施策としてDX推進を掲げ、全社的な変革を加速させています。
その起点となったのが、デジタルトランスフォーメーション研究所(以下、DX研)による「DX基礎研修」です。
今回は、研修を主催したDXプロジェクトメンバーの声も交え、研修実施の背景や狙い、現場で生まれた気づきや変化について詳しくご紹介します。
目次
中期経営計画「ADX2026」とDX推進の背景

一色様
ADEKAグループは2024年からの中期経営計画「ADX2026」のもと、経営基盤の強靱化に注力しています。その大きな柱の一つがDX推進です。
経営基盤の強化には「全社横断でのDX」と「部門主体のボトムアップ型DX」という二つの軸があり、資本効率やカーボンニュートラル対応といったテーマの実現にはデジタルの力が欠かせません。
この2つの軸を効果的に推進していくためには、全社的なDX人財の底上げが不可欠でした。特に各部門の現場を支える人財が自律的にDXを推進できる状態をつくることが、次なる成長のカギと考えたのです。
「各部門にDX担当者を配置し、分科会を中心に推進しているものの、さらなる全社的な底上げにはDX人財の育成が不可欠だと強く感じていました」(一色様)
DX人財育成の課題と研修導入のきっかけ

森田様
これまでのDX推進では、明確な課題意識やノウハウがあるというより、「どこからどう手を付けて良いか分からない」というゼロベースでのスタートが実態でした。
「デジタルで何かをしなければ」という思いはありながらも、“ツール導入ありき”の議論が先行し、戦略と手段の整合が取れていない状態に課題を感じていました。
「そもそもDXとは何か、ADEKAにとってのDXとはどんなものか、何から始めるべきか…そうした根本的な問いに正面から向き合うため、DX基礎研修の実施を決めました」(森田様)
DX基礎研修の実施と内容
部門横断での参加体制
研修には各部門から計30名のDXリーダーが参加。営業職、研究職、スタッフ職、生産職といった多様な職種からメンバーが集い、6グループに分かれて実施されました。
基礎講義とワークショップ
まず「DXとは何か」「環境変化とDX推進の背景」「DX戦略の類型」といった基礎講義を行い、ADEKAの現状と照らし合わせながら、参加者が主体的に問いを持てるよう導入しました。
その後、「今ADEKAがどのような価値を顧客に提供しているか」「これからどんな変化が求められるか」「どこから着手すべきか」「組織文化をどのように変えていくべきか」などを、ワークショップ形式でグループごとに議論しました。
「DXというと“ツール導入”のイメージが強くなりがちですが、研修はあくまで『変革』に重きを置いていました。デジタルは手段であり、事業そのものや顧客への提供価値、組織の在り方をどう変えていくかをじっくり考えられた点が印象的です」(森田様)
グループワークは、単なる座学ではなく「参加型」で進行。付箋を使ったアイデア出しや、他部門メンバーとの対話を通じて、日常業務では得られない新たな視点や気づきが生まれました。
研修プログラム概要
- DXとは何か
何に取り組むのかを共通認識にする - 競争環境の変化
DXが必要な背景を理解する - 業界に発生する変化
様々な業界で何が起こっているのか - DX戦略の類型
様々なDX戦略のパターンを学ぶ - 取り組むべきDX戦略
どのようなDXに取り組むべきかを考える - DXのアプローチ
ADEKAでは、どう進めるべきか
本研修の講師:デジタルトランスフォーメーション研究所 代表取締役 DXエバンジェリスト 荒瀬光宏
現場で生まれた成果と気づき
研修の中で強く印象に残ったのは、参加者一人ひとりが自ら「変革」について深く考えるきっかけを得たことです。
「これまでは、何かアイデアを出す際も“ツールありき”で発想してしまいがちでした。しかし今回は、事業そのものをどう変えるべきか、取引先や組織文化をどう進化させるかといった“本質的な変革”を議論することができたと思います」(森田様)

井出様
また、ADEKAでは部門ごとの専門性が高く、普段は横のつながりが希薄になりがちでしたが、今回の研修を通じて「領域を超えた交流や気づき」が生まれました。
ワークの進行や参加型の形式についても、「付箋を使ったワークで思考の整理やアイデア出しがスムーズだった」「一方通行でなく、全員が主体的に参加できた」と好評でした。
「普段話す機会のないメンバーと意見交換することで、自分にはなかった視点や発想を得ることができました」(井出様)
DX研の研修ならではの価値
ADEKAでは過去に他社の経営戦略系研修も受講したことがありましたが、「業界や事業内容が異なり、自社にうまく応用できないことが多かった」といいます。
「DX研の研修は、実例や成功事例が自社に近く、現実的な議論ができる点が大きな違いでした。腹落ち感も強く、全体像を理解した上で各プロジェクトへの波及や標準化の視点も持てるようになりました」(一色様)
さらに、「誰もが当事者として自分事で考えられた」「参加者全員が真剣に取り組む空気が生まれた」など、組織文化への良い刺激となった点も、他社研修との違いとして挙げられました。
今後のDX推進と展望
これまでは2つの軸のうち「全社横断でのDX」、経営戦略に沿った“トップダウン型のDX推進”にリソースを割いてきました。一つの大きなプロジェクトが一段落したので、今後は各部署が現場主導でテーマを掲げている”ボトムアップ型のDX推進”をさらに加速させていく方針です。
「今回の研修で得た気づきを現場発のアクションにつなげていくことが、今後の大きなテーマです」(一色様)
株式会社ADEKA 企業情報
会社概要
- 会社名:株式会社ADEKA
- URL:https://www.adeka.co.jp/
- 従業員数:連結5,453名、単体1,810名(2025年3月末現在)
- 事業内容:
化学品・食品・ライフサイエンスをコアビジネスに、幅広い市場で価値ある素財を提供するグローバル企業。
時代とともに変化する社会課題と向き合い、新たな素財づくりに挑戦を続けています。
お話を伺った方々
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左から、井出様、一色様、森田様
- 情報システム部 部長 一色秀俊様
- 情報システム部 デジタル推進室 室長 井出丈晴様
- 情報システム部 デジタル推進室 DX推進グループ グループリーダー 森田博様