DX戦略の3類型とは
DX戦略の3類型
DXの戦略には類型がある。ここでは、弊社で類型化している3類型について簡単に触れたいと思う。
顧客体験に基いてDX戦略をデザインする(類型1)
顧客に提供する機能的価値を高める
自社のターゲットとなる顧客の特定の消費行動(ジャーニー)における体験を徹底的に観察し、顧客の課題を解決するのみならず、顧客が現状想定していなかったような新しい機能的価値を提供することにより、顧客がスイッチングしにくく、永きにわたって手放すことのないサービスとする。今までと異なる発想が求められるため、デザイン思考と呼ばれる手法が有効である。
また、当該顧客の消費行動に関わる他のプレイヤーを巻き込みマルチサイドプラットフォームとすることにより、産業構造(エコシステム)全体に破壊的な価値を提供することもありうる。
DXを実施しなければ、いずれどこかのプラットフォーマーに顧客をすべて奪われてしまうという危機感も考慮しつつ進める場合が多い。
顧客のマインドシェアを高めるDX戦略をデザインする(類型2)
顧客に提供する情緒的価値を高める
上記の顧客の特定の消費行動全体をデザインできない場合の手法。これまでは自社の提供するブランド価値で顧客と結びついていたものの、顧客の消費行動は、その目的に応じて多様であり、特定の消費行動を徹底的に観察し干渉することが現実的でない場合
当該顧客の情緒的価値を高めるため、顧客のマインドシェアに関わる様々な顧客体験を、ブランドコンセプト、購買体験、接客の再デザイン、リアル商品、提供空間、事業連携など360度戦略で再設計し、これらの実現のための様々データを管理するビジネスプラットフォームとともに、自らのサービスを革新する。つまり、情緒的価値を徹底的に高めることにより、顧客がスイッチングしにくく、永きにわたって手放すことのないサービスとする。
今提供しているブランド価値は市場に評価されているものの、DXを実施しなければ、先行して情緒価値を再設計したプレイヤーに顧客をすべて奪われてしまうという危機感も考慮しつつ進める場合が多い。
とりあえずDX戦略を進める(類型3)
まずはスタートする
上記いずれのパターンについてもビジョンがあがけない場合、将来ビジョンを打ち立てた場合に、すぐ実現できるよう、DX共通戦略をコツコツと積み重ねていくパターンである。トップがDXについて関心が弱く、全社的なビジョンにまで至っていない場合に用いることができる。ステージ毎、機能ごとに実施するべき項目をフレームワークを元に検討、実施していくので、最終的なビジョンが設定されていなくても、DXで当然行うべきことを中心としたスタートを切ることができる。
ここでは、短期的な課題解決より中長期的なDXを視野におくため、すぐに効果のでない施策も多くなるため、これらの施策に人と予算をかけることの正当性は必要であり、DXをプロジェクトとして組織が認知していることは必要。さもなければ、単なる「草の根DX活動」となってしまい、何かを成し遂げることは難しい。
向かうべき方向性が定まっていないものの、何か始めないとまずいと言う少し漠然とした危機感の場合に採用することが多い。
全パターンに共通の視点
どのパターンにせよ、今までと異なる視点、優先順位でサービスを変革する必要があり、単なるデジタル施策におぼれず、ブランディングや組織行動を変革することが必要となる。そのため、マネジメント手法、ガバナンス、KPI、人事評価手法など事業オペレーション全体を見直すことが肝要だ。
DXごっこ
今回はDX戦略の3類型を紹介したが、DXになっているかどうかの重要な境界線は、「組織が今のままでよいと思っているかどうか」にかかっている。変わらなくてはいけないと思っていない組織は、いくらDXらしきことをやっても、その提供価値の仕組が変わることはない。現在の形や組織行動を否定できないからだ。
組織行動を変えるためには、「今のままではいけないのではないか」と考える姿勢か必須であり、これがDXプロジェクトと「DXごっこ」との大きな境界線となる。
今回はDX戦略の3類型についてお話ししましたが、うちはもうすこし他のアプローチをとっている、こんな課題があるなどあれば是非おしえていただきたく思っております。弊社のDX研究はそのような皆様の声により支えられております。ご協力いただける場合は、以下のフォームよりご入力の上、ご協力をお願いいたします。
(荒瀬光宏)
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