店舗を持つ小売業界のDXとは①〜環境変化〜

昨今、あらゆる業界でニューノーマルに即したビジネスモデルや組織の形が模索されている。特に店舗を持つ小売業界においては、コロナ禍において三密を避けるなど顧客・購買行動が急速に変化したことに合わせ、ビジネス全体の転換が迫られています。さらに、コモディティ化や顧客体験価値の向上など、より消費者のニーズに合わせ柔軟に新しい商品やサービス、販売方法に挑戦し、自社の商品や店舗としての魅力をターゲット層に届ける必要性が高まっています。

今回から、小売業界のDXに関して連載していきます。

アジェンダ

  1. DXとは

  2. 小売業界の現状

    1.  ECの拡大

    2. カスタマージャーニーの複雑化

    3. 商品・サービスのコモディティ化

    4. 人件費・物流費の高騰

    5. 顧客経験価値の向上

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第2回では、現状を理解いただいた上で生存戦略の方向性を提示することを試みる。
なお、本連載は株式会社メタップスのセミナーで講演した内容を元に再編集した上で執筆している。

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デジタルトランスフォーメーションとは?

デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)とは、04年、ウメオ大学教授(当時)のエリックストルターマン氏(現在、当社Executive Advisor他)が彼の論文『Information Technology and  theGood Life』(2004, Umeå universitet)で提唱された。

The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life

デジタル技術が人々の生活のあらゆる側面に影響を引き起こしたり、変化をもたらすこと

引用:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは? 〜提唱者の定義を振り返る〜

また、当社では以下のように定義付けを行なっている。

デジタルトランスフォーメーションとは

  1. デジタルテクノロジーの進展で劇的に変化する産業構造と新しい競争原理を予測し

  2. 自社のコアコンピタンスを活用して他社より早く到達可能なポジションと戦略の策定

  3. 戦略実現のための新しい価値とサービスの創造、事業と組織の変革、意識と制度の改革  

を経営視点で遂行すること

参考:デジタルトランスフォーメーションの定義

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小売業界の現状

近年のグローバル化、情報化、ユーザーニーズの多様化・可視化に伴い事業者や顧客が見ているものが多様化されている。また小売業界は、店舗維持にかかる固定費と棚卸資産が大きいモデルであり、売上低下の経営上の影響が大きいため、保守的な戦略を取りがちな業界である。また人手不足(人件費増加)と利益率の低下が常態化している。

今回は以下の点の環境変化をまとめている。

  1.  ECの拡大

  2. カスタマージャーニーの複雑化

  3. 商品・サービスのコモディティ化

  4. 人件費・物流費の高騰

  5. 顧客経験価値の向上

それぞれに適応して、デジタルで変化する環境に対して、伝統・常識・前例に囚われずデジタルを使って、変化し続けられる変革が求められます。

生存戦略として以下の点を実施していくことが求められます。

  1. 店舗の意義の再定義

    1. 店舗のメディア化

    2. 非計画購買を促す店舗運営

    3. 顧客データを蓄積する”宝の山”

  2. デジタル活用の効果の可視化

    1. 需要予測の高度化による商品回転率の増大

    2. 非計画購買による買上点数、売場生産性の向上

    3. 非価格主導型のISPによる、コストの低下

ECの拡大_ECに小売引力の法則は通用するか

コロナ禍において、それまで実店舗で購入していたものをECで購入するようになったユーザーがより一層増えた。また飲食店の配達代行が急速に拡がるなど、より一般消費者にとって「Web上で比較検討、購入、決済をして、自宅で商品を待つ」が日常的に行われるなど顧客行動が大きく変化した。

従来、店舗運営において、店舗立地はもっと必要な観点であり、商圏分析は長年議論され、理論が体系化されている。そのうちライリーの法則やハフモデルは小売引力の法則として知られている。2つの都市がその間にある都市から販売額(顧客)を吸収する割合は、その2つの都市の人口に比例し、距離の2乗に反比例する。さらにある店舗を選択する確率を、店舗の規模(売場面積)に比例し、それまでの距離に反比例する。

上記に合わせ検討してみると、実店舗では制限がある距離や売場面積について、ECでは制限がなく拡がっている。今後ニューノーマルとなる中で、小売業においてもこのようなニーズに合わせてデジタル技術を活用した販売方法や、サービス、マーケティング手法も変化されるべきである。

カスタマージャーニーの複雑化

従来のマス広告や店構え、外装、看板、店頭デザインなどによる「認知」、「来店・購入」、「購入後・リピート」、「愛着・ファン化」という単純で一方向なカスタマージャーニーを顧客は通らず、複雑で双方向性のあるカスタマージャーニーを通る。そのなかでデジタルマーケティングやデジタルでの顧客接点、店舗でのプロモーション、商品のリコメンデーションなどで顧客一人一人のLTVを向上させることで利益の最大化を目指すことが求められる。

単純・一方向なカスタマージャーニーから複雑・双方向なカスタマージャーニーが存在することになる。また特定顧客が特定のジャーニーを複数回通るとは限らない(初回は店舗来店に、次回はECでの購買になるなど)

コモディティ化

モノやサービスがありふれたものになる。とにかに手軽で、できるだけ安く買いたい消費者の意向が背景となり、インターネットの台頭で、大きく進展

結果、販売店毎の価格の比較が可能となり、低価格化競争が激化。利益率の低下を招く。


人件・物流費の高騰

パート、アルバイトなどの人件費が高騰、さらにECの拡大により物流費も高騰傾向

顧客体験価値の向上

代替可能なコモディティ化されたモノやサービスではなく、顧客の心の中に作られる情緒や感性に根付いた体験を提供することで、より強いブランドを構築

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それぞれに適応して、デジタルで変化する環境に対して、伝統・常識・前例に囚われずデジタルを使って、変化し続けられる変革が求められます。

第2回では生存戦略として以下の点を取り上げる。

  1. 店舗の意義の再定義

    1. 店舗のメディア化

    2. 非計画購買を促す店舗運営

    3. 顧客データを蓄積する”宝の山”

  2. デジタル活用の効果の可視化

    1. 需要予測の高度化による商品回転率の増大

    2. 非計画購買による買上点数、売場生産性の向上

    3. 非価格主導型のISPによる、コストの低下

(白石陸)


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