教育のDX/オンライントランスフォーメーションー探究学舎の事例から学ぶー
コロナ禍に伴う社会のオンライン化の進行
社会のDXの影響を受けて人々の生活や消費に大きな変化が生じる。モノ消費からコンテンツやオンラインサービスなどのデジタル消費へのシフト、新しい顧客体験を提供するサービスの出現などである。これらの変化は、コロナ禍に伴うオンライン化により大いに加速された。これまで当然のように対面で実現されていた習い事、学校教育、旅行、婚活、冠婚葬祭などのコト消費が、強制的にオンライン化されただけではなく、買物、外食といったモノ消費についてもデジタルサービスで包含されたデジタル消費としての特性を高めた。
探究学舎のオンライントランスフォーメーション
熱心に教室で学習する生徒のイメージ
東京三鷹市にある探究学舎は、小学生を中心として、子供の好奇心を刺激し、自ら探究するきっかけを提供する塾である。2020年3月にコロナ禍で全国の小学校が休校になった当日から、オンラインで様々な授業を無料配信し、親が出勤している間に手持ち無沙汰になる自宅待機小学生たちに、授業を送り届けた。また、そえまで三鷹に通っていた通学生にむけた授業もすべてオンラインに切り替えた。当初こそ様々なトラブルもあったものの、日々そのコンテンツや配信クオリティは上がり、クイズなど、オンラインならではのインタラクティブなコンテンツを追加し、放送業界顔負けのオンライン授業となった。さらに、子供たちが自身の研究成果を発表できるオンラインメディアを用意し、子供たちが自身の研究や創作の成果を共有し、刺激しあえる場を作った。単なるオンラインへの乗り換えではなく、オンラインに最適化された教育サービスに切り替えることにより、子供たちの探究意欲を大幅に高めたのである。結果的に、生徒数は、コロナ前は三鷹市の校舎に通学できる約500名であったが、全国一斉休校の3ヶ月後には、全国に2000名の生徒を獲得するに至った。市場のニーズがオンラインに切り替わったその瞬間を見逃さずに、価値提供の手段を切り替えた好例である。
従来の価値やサービスの提供形態を変えずにオンライン化することを私は「オンラインシフト」と呼び、探究学舎のようにオンラインを前提にサービスを再設計しオンラインの価値を最大限に発揮することを、「オンライントランスフォーメーション」と呼んでいる。オンラインシフトは単なる提供チャネルのスイッチであるため、従来リアルで可能だったことが不可能になり、窮屈になったり、顧客体験価値が低減する印象を受けやすい。その点、オンライントランスフォーメーションとなると、サービスの再設計が必要になるものの、本来のサービスの顧客体験価値を最大化することが可能である。結果、コロナ禍が終わっても、「通学する塾を選ぶ」という地理的な制約から解放されることにより、オンラインでサービスを受けたいという生徒が増え続け、企業価値を向上し続けることができる。
オンライントランスフォーメーションの次のステージへ
探究学舎の次の目標は、生徒毎の興味や進度にあわせたパーソナライゼーション(アダプティブラーニングと呼ばれる)の実現である。このように顧客の行動データを活用して最適なサービスが継続的に提供されエンゲージメントと呼ばれるつながりが継続的に向上していく状態は、デジタルトランスフォーメーションで目標とするべきの重要なステップであり、このステージに達したサービスは長期的なLTV(ライフタイムバリュー)を獲得し事業価値を向上することができる。なお、習い事業界は比較的顧客のスイッチが早く、本当に長期的に利用してもらえるサービスへ昇華できている事業は少ないと感じる。これからの探究学舎の挑戦が楽しみだ。
(荒瀬光宏)
なお、探究学舎の事例については、DX実践道場の講座「DX基礎講座ーアフターコロナで加速するデジタル変革ー」の中でも解説しております。よろしければ、ご覧いただければと存じます。
参考)【DX実践道場で学べること④】 DX基礎講座ーアフターコロナで加速するデジタル変革ー
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