変化し続ける組織こそDXのゴール、第四次産業革命期の指針策

今年も多くの場でDXにまつわるお話を講演する機会をいただきました。その最後に必ずお伝えしているのが、DXの到達点についてです。

DXは文字通り「変革」です。どの状態になれば変革は目的を達成して終わるのか、どのような組織になったらゴールと言えるのでしょうか。

これを考えるためには、DXの目的に立ち戻る必要があります。DXとは、デジタルテクノロジーやデータを活用し、社会が急速に変化する環境の中で、企業・行政・組織・個人が自身の価値を最大化するためにポジショニングを再検討し、価値提供の仕組みを変える活動です。つまり、この急速な変化が続く限り、組織の変革に終わりはありません。

この社会の急速な変化は「第四次産業革命」と呼ばれます。第四次産業革命では、デジタルの世界とリアルな世界が融合し、リアルな世界ですらデータを獲得して高速PDCAを自律的に実施できるようになります。私は、この第四次産業革命が完了するまでには50〜60年を要すると考えています。過去の産業革命にも相応の期間がかかったことに加え、アナログ時代に生まれた人々の生活様式が、市場での価値提供の手段に大きく関わるためです。

現在は、この第四次産業革命の過渡期に入り、5〜6年目にあたります。つまり、産業革命全体のわずか10分の1を体験したに過ぎません。10分の1とはいえ、どのように変化するのか、成功要因はどう変わるのかは、ある程度見えてきました。しかし、業界ごとに競争優位の要素が異なっていたり、依然として不透明な点が多く残っています。すべてを予測することは難しいため、常に環境変化にアンテナを張り、迅速に対応できる組織能力が求められます。この能力は、既存ビジネスモデルに合わせてマネジメントとガバナンスを整えてきた成熟組織ほど習得が難しいとされています。

第四次産業革命が終わった先に安定した業界環境が訪れる可能性はありますが、その姿はまだ想像の域を出ません。それまでは変化に高速かつ柔軟に対応することが不可欠です。つまり、この過渡期においては、変革の到達点は存在しません。常に変革し続ける必要があるからです。

あえてDXのゴールを定義するならば、自己変革を継続できる組織になることです。

最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもありません。唯一生き残ることができるのは、変化できる者です。

私はこのメッセージを講演の最後に必ずお伝えしています。一般的には進化論のチャールズ・ダーウィンの言葉とされますが、実際には彼の発言を示す文献は見つかっておらず、別の人物の言葉とする説が有力です。

荒瀬光宏

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
代表取締役/DXエバンジェリスト
DX推進・企業変革の専門家。豊富な現場経験と実践知をもとにコンサルティング、企業研修、講演活動を行う。
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