デジタルトランスフォーメーション研究所

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第四次産業革命とは何か

産業革命とは

 産業革命とは、社会や産業の構造が変わるほどの影響を与える新しいテクノロジーの出現と、それにより産業の仕組が大きく変貌することをさす。

 第一次産業革命では、「蒸気機関」というテクノロジーが出現し、いままで人間の手で作る以外に手段のなかった製造という行為を一変するに及んだ。産業の大規模化が始まり、設備を保有する資本家と労働する人々という貧富の差が拡大するメカニズムが生じた。また、製造したものを地域で消費するのではなく、蒸気機関車で遠隔地に運搬できるようになったことで、市場の拡大と生産拠点の集約が始まった。

 第二次産業革命では、「電気、石油化学」というテクノロジーが出現し、様々な向上の動力源が蒸気機関から電力、モーターに置き換わった。蒸気機関で最適化されている工場を、電力、モーターで稼働する工場にうまく変革した企業は業績を伸ばし、過去の技術に固執する企業は淘汰された。石油化学からは、プラスチックや化学繊維を使った安価で大量にモノを製造する技術が生み出されて、一気に世界はモノであふれ始めた。移動手段としては馬車が石油燃料で動く自動車に置き代わり、製造現場のみならず、市民の暮らしや道路の構造といった社会全体の変革につながった。この革命を起点としたさまざまな変化が地球温暖化、環境破壊の主要因となり、現在、脱プラスチックや自動車の電気駆動へのシフトが進んでいるのは、ご存じのとおりである。

 第三次産業革命では、「コンピュータ、原子力」というテクノロジーが出現し、物理的な労務だけでなく知的な労務についても、機械が代替する世界となった。インターネットやクラウドコンピューティングを含めたコンピュータの活用て、物理財だけではなく情報財が価値のあるものとして捉えられ、情報財を扱う会社や事業(Microsoft、Google、Apple iTunes、Netflixなど)が急成長し、世界の企業価値のリーダーとなった。また、これらのコンピュータは一般企業の知的労務を代替し、効率のよい情報管理、集計、分析などを可能とした。原子力については、制御が難しいこともあり、社会や産業での活用については、まだ議論がわかれている。

第四次産業革命

 第四次産業革命は、どのようなテクノロジーがトリガーになったかという文脈でWIKIPEDIAに記述されているのは、以下の通りである。

 「ロボット工学、人工知能 (AI) 、ブロックチェーン(仮想通貨)、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー(生物工学)、量子コンピュータ、モノのインターネット (IoT) 、3Dプリンター、自動運転車(スマートカー)、仮想現実、拡張現実、複合現実などの多岐に渡る分野においての新興の技術革新」

 これについては、違和感を感じる方も多いのではないだろうか。今までの産業革命は何か1つのテクノロジーがトリガーとなっており、それが社会や産業を一変させたと言われれば納得性があるが、第四次産業革命はこんなにたくさんのテクノロジーが出現したから、いまは大変な変革期なんだと煽られているようにも受け取れるからだ。では、これらは無理矢理こじつけるために書き出したバラバラのテクノロジーの集まりなのだろうか?

第四次産業革命を引き起こすテクノロジーの本質

 答えは、NOだ。すべてのテクノロジーには急激な発展を遂げた共通要因があり、また、その技術の貢献によって相乗的にこの共通要因の性能が拡大した。その共通要因にあたる本質だけを抽出してみると、以下の事が言える

・現実空間のあらゆる事象をデータ化することが可能になった

・どれだけ大量のデータでも瞬時に処理分析して発見、予測、判断が可能となった

 これらにより、情報だけを取り扱っていたコンピュータがサイバー空間に加え、現実空間のあらゆる事象を捕捉し判断し、さらにロボット技術などにより現実空間に対してアクションが可能になった。また、一般企業や行政における知的業務の中でも、ルーチンワークの一部としての業務判断はコンピュータが代替可能となる。

 だからこそ、差別化の為には、超高速でデータを捕捉して分析してアクションを行い、事業やサービスを改善することが最も重要となる。この法則は、ほぼすべての業務に対して通用される為、製造の革命でも流通の革命でもなく、すべての産業や社会のあり方が一変する大きな変化と考えられる。つまり、影響範囲がすべてであることが今回の産業革命の特徴だ。

 このすべての業務や生活に変革をもたらすデータを活用した超高速PDCAをまわす仕組みを実現するのが、デジタルテクノロジーで呼ばれるものであり、要素技術を指す情報技術(IT)と区別して使われている。つまり、このデジタルテクノロジーが第四次産業革命のトリガーとなるテクノロジーと言える。そのため、今回の産業革命においては特定の技術に着目し、「当社もビッグデータでなにかしろ」とか「AIを業務で利用しよう」とするのでは成功しない。データを取得して超高速に改善しつづけるメカニズムを商品やサービスや経営に埋め込むことが重要であり、従来の仕事の仕組を変えることが必須となるので、経営視点でしっかり設計して推進することが肝要である。

 その点で、いままでの仕事をデジタルに置き換えるデジタルシフトは重要ではあるが、さらに、従来の仕組(商品、オペレーション、組織、マネジメント)を変えるトランスフォーメーション(DX)をすることが求められている。

続編「第四次産業革命後のKSF(成功の要因)」はこちら

(荒瀬光宏)

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