DXにおける多様な視点(鳥の目、魚の目、虫の目)

事業を分析する視点として「鳥の目」「魚の目」「虫の目」という言葉があります。「鳥の目」は高所から俯瞰して自社のポジションを絶対的位置で捉える視点、「魚の目」は流れを読み、時間とともに変化する趨勢を捉える視点、「虫の目」はミクロな視点で改善点を見つける視点です。

鳥の目・魚の目・虫の目

鳥の目・魚の目・虫の目

鳥の目・魚の目・虫の目

 

「虫の目」しか持たない組織は近視眼的

長期にわたり同じ戦い方を続ける企業は少なくありません。競争原理が長らく変化していなかったため、ある意味では当然です。その結果、マネジメントやガバナンス、人の行動選択肢は伝統・常識・前例といった組織文化によって制限されます。競争原理を満たすにはミクロな「虫の目」に集中して改善すれば、戦略上の価値提供効率が高まり、余計な検討を省くことができたからです。

しかし、環境が変化すると、この戦法では勝てなくなります。いわゆる近視眼的で硬直した組織になってしまいます。

イラストでいえば、虫(トンボ)が「両手の間を離して漕いだ方がよい」と助言しています。前に効率よく進むには重要で、ミクロな視点では正しいのですが、船は漕いでも海流に押し流され北極に近づいています。マクロな視点では後退しているのが現状です。

「鳥の目」を持つ組織は俯瞰的

「鳥の目」は自社の絶対的位置を見定める視点です。ただし、絶対視点の定義は難しいものです。何を物差しにするかで前進とも後退とも解釈できます。相対性理論に例えれば、地上で前進していても宇宙から見れば地球自体が高速で自転・公転しています。国内業界内での相対的位置、世界市場での相対的位置、到達すべき顧客満足度など尺度は多様です。環境変化に応じて「目指す場所に近づいているか」を測る物差しが必要です。これらが定義されていなければ、株価の上下といった近視眼的指標でしかポジションを測れなくなります。

「魚の目」を持つ組織は流れを読む

魚は海流を利用して季節ごとに移動し、潮の満ち引きを活用して産卵や採餌を行います。環境が常に一定ではないことを理解し、流れがどう変わるかを見極めて行動しています。「魚の目」は流れを読む視点です。今どのような時流か、次にどのような潮目が来るかを読むことは、大きな環境変化下で極めて重要です。新たな潮目を見越して備えれば、競争優位を拡大できます。流れを読むことは正しい戦略立案に欠かせません。特にDX戦略では中期的視点が必要なため、「魚の目」は一層重要になります。

それぞれの視点を併せ持つ

一つの視点で足りるわけではありません。定期的に各視点から自社のポジションを見直し、近視眼的になっていないか確認することが不可欠です。長年同一ビジネスモデルを続けてきた企業こそ、従来のやり方を顧み、新たな価値提供の仕組みを検討し、あるべき姿を多様な視点で再定義することが求められます。

執筆者:デジタルトランスフォーメーション研究所 代表取締役 DXエバンジェリスト 荒瀬光宏|

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