デジタルとは?簡単に|アナログとの違い・身近な例・メリット

「デジタル(Digital)とは?」— ひと言でいえば、「情報を『数字や符号(離散的な値)』で扱う考え方」です。対義語は「アナログ(連続的な値)」です。

このシンプルな概念が、私たちの生活やビジネスを根本から変えました。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で、「デジタル」や「デジタル化」の意味を正しく理解できているかは、意外と見落とされがちな土台です。

本記事では、「デジタルとは何か?」という定義の核心から、アナログとの違い(身近な例)、ビジネスで必須となる「デジタル化(デジタイゼーション/デジタライゼーション)」の区別、IT化との違い、そしてデータ活用原則「FAIR」まで、DX推進の基礎知識を体系的に解説します。

目次

デジタルとは?意味をわかりやすく(定義)

デジタルとは?簡単に

デジタル(digital)とは連続的に変化する量を段階的に区切って「離散的な値(数字・符号)」で表す考え方。対義はアナログ(連続値)です。

デジタルの特徴は、データが複製しても劣化しにくく高速・大量処理ができ、編集や統合が容易なことです。

デジタルの語源

英語の「digital」の語源はラテン語の「digitus(ディジトゥス)」で「指」を意味します。そこから、「10より小さい数を指に関連付ける」意味でdigitalが使われるようになりました。
「1,2,3,4,…」と指を折って数えることをイメージするとわかりやすいでしょう。

なお、digitalの日本語表記としては「デジタル」「ディジタル」の二通りがあります。例えば、日本産業規格 (JIS X 0001, JIS X 0005) などでは「ディジタル」という表記が用いられます。しかし、慣用表記としては、現代では「デジタル」が主流です。

企業にとってのデジタルの定義

当研究所では、デジタルを「情報(データ)が劣化せず、高速かつ大量に流通・加工・編集できる状態」と定義します。業務効率化から新規事業の創出まで、デジタルの価値の源泉はこの特性にあります。

デジタルトランスフォーメーション研究所では、このデジタルの本質を理解し、ビジネス変革に繋げるためのDX研修サービスを体系的に提供しています。

アナログからデジタルへ移行した身近な例

デジタル化がどのように生活やビジネスを変えてきたのでしょうか。
「音楽」「画像」「動画」「テキスト」の4つについて、アナログからデジタルへ移行した身近な具体例をまとめます。

アナログからデジタルへ移行した身近な例
アナログからデジタルへ移行した身近な例

音楽データのアナログからデジタルへの移行

  • レコード、カセットテープ:音楽アナログデータとして記録。レコードプレーヤーなどでアナログデータを直接再生
  • CD:音楽をデジタルデータとして記録。しかし、流通はCDという物理媒体(アナログ)
  • MP3プレイヤー:iPod・iTunesなどの普及で音楽データをネットワーク経由で流通できるように
  • スマートフォン:iPhoneなどの音楽の「検索、購入、視聴」の一連の体験が1台の端末で瞬時に簡単にできるように

画像データのアナログからデジタルへの移行

  • フィルム:アナログデータとして記録。写真として現像し出力
  • デジタルカメラ:デジタルデータとして記録。当初多くの場合はデジタルデータを写真として現像(アナログ出力)
  • スマートフォン、タブレッド:デジタルの写真データを物理媒体に出力せずに保管、流通させることが当たり前に。写真を編集加工したり、ペン付きタブレッドなどで最初からデジタルデータとして作成することが可能に

動画データのアナログからデジタルへの移行

  • 8mmフィルム:アナログデータとして記録。映写機でアナログデータを直接投影
  • DVD:動画をデジタルデータとして記録。しかし、流通はDVDという物理媒体(アナログ)
  • Youtube・Netflix:動画の「検索、入手、視聴」の一連の体験が1台のスマートフォンやPC端末で瞬時に簡単にできるように。また、移動中などいつでもどこでも視聴できる

テキストデータのアナログからデジタルへの移行

  • 新聞書籍:編集はデジタルだが、出力は物理媒体(アナログ)
  • 電子版の新聞・Kindle:テキストデータをネットワークで流通し、Kindle、スマートフォンなど電子端末で閲覧。検索、購入、加工が瞬時に簡単にできる

以上のように、身近な具体例で比較するとと、アナログとデジタルの違いがイメージしやすいでしょう。では、アナログとデジタルは要が何が違うのでしょうか?また、デジタル化のメリットはなんでしょうか?これらの疑問について、次の項目からわかりやすく説明していきます。

アナログとデジタルの違い(わかりやすく)

アナログとデジタルは、情報の表現形式と処理形式が違う

アナログとデジタルの違いは、情報の表現形式と処理方法の違いです。

アナログとデジタルと違い:表現形式と処理方法
アナログとデジタルと違い:表現形式と処理方法

アナログは温度や音のように変化が途切れず、電圧の高さや針の位置など連続のまま表現し、連続のまま処理します。 一方、デジタルはその連続した変化を「一定の間隔で測る(サンプリング)」「段階に区切る(量子化)」「数字に置き換える(符号化)」という流れで数字のデータに変えます。ここで扱うのは波形そのものではなく、0と1の記号の並びです。

例で見ると、時計は針が滑らかに動く表示がアナログ、一定間隔で数が更新される表示がデジタル。録音ではレコードの溝の起伏がアナログ、音の大きさを一定ごとに記録した数値の並び(PCMなど)がデジタルです。

連続と離散とは:データの扱いをグラフでみる

アナログとデジタルのデータの扱いの違いの中心概念が「連続」と「離散」です。わかりにくい概念なのでグラフで補足します。

アナログデータとデジタルデータの違い:連続と離散
アナログデータとデジタルデータの違い:連続と離散

自然界で得られる音声などの情報は、連続的なアナログデータとして観測されます。しかし、このままではコンピュータで扱いにくいため、二進数で表されるデジタルデータに変換します。

アナログからデジタルへの変換(A-D変換)

アナログデータをデジタルデータへ変換することをA-D変換(Analog-Digital変換)と言います。A-D変換は、主に「標本化」と「量子化」の2ステップで行われます。

  1. 標本化(サンプリング)
    アナログの連続的な情報(波形など)を、一定の時間間隔で区切り、その瞬間の値を取り出すことです。
  2. 量子化
    標本化(サンプリング)で取り出した値を、決められた段階(目盛り)に当てはめ、最も近い値に置き換えます。この値を最終的に0と1の数字(符号)に変換します。

なぜ今、企業はデジタル化に取り組むのか?(目的と重要性)

「デジタル」の定義を理解した上で、次に知るべきは「なぜ今、多くの企業がデジタル化を急ぐのか」というビジネス上の目的です。

この目的は、後ほど詳しく解説する「デジタル化の段階」と密接に関連しています。大きく分けて、「守り」の効率化から「攻め」の変革まで、3つのレベルで整理できます。

1. 業務の効率化と生産性向上(デジタイゼーションの目的)

まず基本となるのが、アナログな業務プロセスをデジタルに置き換える「デジタイゼーション」による効率化です。これまで紙やExcel、人の手で行っていた定型業務をデジタルデータで自動処理(RPAなど)し、ミスや二重入力を削減します。
これはデジタル化の第一歩であり、従業員がより付加価値の高い業務に時間を使うための土台(守り)となります。

2. プロセス最適化と顧客体験の向上(デジタライゼーションの目的)

次の段階が、デジタルを前提に業務プロセス全体を再設計する「デジタライゼーション」です。これは単なる置き換えではなく「再設計」です。
例えば、顧客の購買履歴、Web閲覧履歴、問い合わせ履歴といったデジタルデータを部門横断で連携・分析し、「顧客が何を求めているか」を予測します。その結果に基づき、オンラインとオフライン(店舗)で一貫した最適なサービスを提供することで、顧客体験(CX)を抜本的に向上させます(攻め)。

3. 新たなビジネスモデルの創出(DXの目的)

デジタル化が目指す最終的な目的が、競争環境のルールを変える「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実現です。
例えば、製品にセンサーを付けて稼働データを収集・分析し、単なる「モノ売り」から故障予知や運用サポートといった「サービス(コト売り)」で収益を上げるモデル(サブスクリプションなど)へ転換します。これは、デジタルデータがなければ不可能な、全く新しい価値の創出(変革)です。

このように、デジタル化の目的は段階的に深化します。次のセクションで、これらの基盤となる「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」の違いについて、詳しく見ていきましょう。

デジタル化の種類:デジタイゼーションとデジタライゼーション

デジタル化は大きく二つに分けられます。本記事では、デジタイゼーション(Digitization)=データのデジタル化と、デジタライゼーション(Digitalization)=プロセスの再設計の二層で整理します。

デジタル化の2種類(2層モデル):左=デジタイゼーション(データのデジタル化)、右=デジタライゼーション(プロセス再設計)
デジタル化の種類:デジタイゼーションとデジタライゼーション

デジタイゼーション(Digitization)

アナログや物理的な情報をデジタル形式に置き換える段階です。

例:紙の帳票をスキャンしてPDF化、アナログ録音をPCMデータ化、手書き伝票をCSVへ入力など。対象は個々のデータや作業単位で、業務フロー自体は基本的に従来のままです。

デジタライゼーション(Digitalization)

デジタル前提で業務プロセスを再設計する段階です。データ化された情報が前提となり、部署や関係者をまたいで入力→承認→共有→保存→連携の流れをデータ中心で組み直します。

例:申請〜承認〜台帳更新をワークフロー化し、二重入力をなくす等。

デジタル化の違い:部分最適と全体最適の視点

業務プロセスの視点からみると、デジタイゼーションは部分最適と言えます。業務の一部を効率化したり、部分的な改善を進めたりする活動です。

一方、デジタライゼーションの目標は全体最適と言えます。個々の業務の効率化だけでなく、企業業務全体の視点で最適化を図り、環境変化に柔軟に対応できる仕組みを構築します。

※部分最適と全体最適の違いについては、以下の企業変革事例分析記事もご覧ください。
ユニマットリック小松社長変革事例インタビュー|部分最適から全体最適で挑む業界DX

デジタル化の種類:2層モデルと3層モデル

デジタル化の種類には、デジタイゼーションとデジタライゼーションの2層に分けるモデル。ビジネスや組織の変革であるDX(デジタルトランスフォーメーション)を位置づける3層モデルがあります。3層モデルについて、詳しくは 「デジタイゼーション・デジタライゼーション・DXの違い(3層モデル)」をご覧ください。

「デジタル化」と「IT化」の違い

デジタル化とIT化は、似た言葉ですが、焦点が異なります。
IT化は「既存のやり方を前提に特定業務をツールで自動化・効率化」する発想。一方、デジタル化は「データ中心で全体の流れを組み直す」設計思想です。
また、手段(ツール)に着目するのがIT化、データの流れ(生成・流通・再利用)に着目するのがデジタル化、と押さえると区別しやすくなります。

  • 対象範囲:IT化=個別業務・機能単位/デジタル化=エンドツーエンドのプロセス
  • 出発点:IT化=現行手順を前提/デジタル化=データ前提で設計を見直し
  • 設計の単位:IT化=システム機能・画面/デジタル化=データモデル・フロー・連携
  • 成果のとらえ方:IT化=その業務の処理時間・作業負荷/デジタル化=全体リードタイム・再利用性・トレーサビリティ

例:経費精算で、IT化は既存の紙様式をWebフォームに置き換えること。デジタル化は、証憑データの取得から承認・会計連携・保管・検索までをデータ起点で再配置し、二重入力や属人手順が生じない設計にすること、という違いです。

デジタル化の整理としては、「デジタル化の種類」も合わせてご参照ください。

デジタルの特性(4つのメリット)

劣化しない(複製耐性)

アナログデータは時間や複製で劣化しますが、デジタルデータは基本的に劣化しません。音楽・写真・文書など、コピーや長期保存でも情報を保てます。

小型・大容量(集約と可搬性)

大量のCDや書類を持ち歩く必要がありません。小さなチップやクラウドに膨大なデータを保存できます。

加工・編集・統合が容易(再利用性)

デジタルデータは編集や加工が簡単です。写真の補正、文章の編集、複数データの統合も容易で、新たな価値を生み出しやすくなります。

検索・翻訳・要約で価値を拡張(演算性)

検索・翻訳・要約などの処理で膨大な情報を瞬時に活用でき、業務効率の向上や新たな発見につながります。

デジタル化のデメリットと向き合う(課題・リスク)

デジタルの特性(メリット)を享受する一方で、企業はその裏側にあるデメリットやリスクにも対処する必要があります。これらを事前に認識し、対策を講じることがDX推進の鍵となります。

1. セキュリティリスクの増大

あらゆる情報がデジタルデータ化され、ネットワークに接続されることで、サイバー攻撃や不正アクセスによる情報漏洩リスクは格段に高まります。顧客データや機密情報が流出すれば、企業の信用は失墜します。強固なセキュリティ対策と、従業員の意識教育が不可欠です。

2. デジタルデバイド(情報格差)

社内において、デジタルツールを使いこなせる従業員とそうでない従業員との間に「デジタルデバイド(格差)」が生じるリスクです。この格差は、業務効率の低下だけでなく、特定の従業員への業務集中や、組織内の一体感の喪失にも繋がります。全社的なITリテラシーの底上げが求められます。

3. システム障害・依存のリスク

業務プロセスの多くをデジタルシステムに依存するため、ひとたびシステム障害や大規模な通信障害、停電が発生すると、事業全体が停止(ブラックアウト)する危険性があります。クラウドサービスの障害も含め、特定のシステムに依存しすぎることの脆弱性を認識し、代替手段や復旧計画(BCP)を準備する必要があります。

4. 導入コストとDX人材の不足

新たなデジタル技術の導入には、当然ながら初期投資(イニシャルコスト)と維持・運用コストがかかります。また、それ以上に深刻なのが、これらのシステムを企画・運用できる「DX人材」の不足です。ツールを導入するだけではデジタル化は進まず、その目的を理解し使いこなせる人材の育成が急務です。

FAIR:データを最大限に活用するための4原則

FAIRは、データを「見つけられる(Findable)」「アクセスできる(Accessible)」「つながる(Interoperable)」「再利用できる(Reusable)」状態に整えるための国際的な原則です。元々研究データの適切な公開方法を模索するなか「オープンデータ」の潮流として生まれました。
しかし、FAIR原則は、研究データだけでなく、社内データ活用の枠組みとしても有効です。ここではビジネスの現場でも分かりやすい言葉で4つの要点を説明します。

Findable(見つけられる)

必要なデータに、誰が見ても迷わずたどり着ける状態です。まず「どこに何があるか」を一覧化し(データの住所録)、タイトル・作成者・対象期間・更新日・簡単な説明などの“説明情報”を付けて検索できる形にします。ファイル名や項目名の書き方をそろえることも効果的です。さらに、資料の場所が移っても行き先が変わらない固定のID(変わらない識別子)を付けておくと、リンクの共有や参照が安全になります。要は、探す時間をなくすための“標札”と“地図”を整えることがFindableです。

Accessible(アクセスできる)

見つけたデータに、決められた条件のもとで確実に取り出せる状態です。「アクセスできる」は“誰でも自由に見られる”という意味ではありません。必要な人が、定められた手順で申請し、承認後すぐ使えることが大切です。ダウンロードの入り口や保存場所を一つにまとめ、ログイン方法や連絡先、利用できる時間帯を明記します。取得の履歴や更新の知らせが分かるようにしておくと、現場の“探す・待つ・確認”が減り、協働が進みます。守るべき情報は適切に制限しつつ、手続きは簡潔に保ちます。

Interoperable(相互運用できる)

システムや部署が違っても、同じ意味でデータをやり取りできる状態です。日付や住所の書き方、商品や顧客のコード、単位などの“言葉”をそろえ、項目の定義を共有します。たとえば「受注日」と「出荷日」を明確に区別し、顧客と注文、製品と在庫といった関係が分かるように紐Mづけます。これにより表記ゆれや手作業での変換が減り、連携や横断分析が自動で回りやすくなります。相互運用できるとは、部門やアプリの違いを越えて、意味が崩れない土台を持つことです。

Reusable(再利用できる)

データを安心して繰り返し使える状態です。まず、使ってよい範囲(利用ルールやライセンス)を明記します。次に、いつ・誰が・どの方法で作成し、どこから来たかという来歴、更新頻度、数値に何が含まれるか/含まれないかといった“説明書”を添えます。業界や分野の標準に沿っていることが分かれば、外部との連携や検証もしやすくなります。これらが揃うと、別部署や将来のプロジェクトでも誤解なく使え、結果の再現や再学習にも耐えるデータ資産へと育ちます。

参考:FAIR原則(日本語訳)|NBDC(JST)

よくある質問(FAQ)

Q. デジタルとは、ひと言で?

A. 連続した量を区切って離散的な数値で表すこと。対義語はアナログです。

Q. アナログとの違いは?

A. アナログは連続量、デジタルは離散値。デジタルは複製しても劣化しにくく、高速・大量処理に向きます。

Q. 「デジタル化」と「DX」の違いは?

A. デジタル化は業務の自動化・効率化、DXはビジネスモデルや組織変革まで含む概念です。
詳しくは、デジタイゼーション・デジタライゼーション・DXの違い(3層モデル)をご参照ください。(DX研のDX研修では、この違いを企業の変革事例と共に体系的に学べます。)

Q. デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは?

A. デジタイゼーションは「データのデジタル化」、デジタライゼーションは「データのデジタル化を前提で業務の流れを見直す」ことです。
詳しくは本記事の整理「デジタル化の種類:デジタイゼーションとデジタライゼーション」をご参照ください。

Q. 代表的なデジタルの例は?

A. デジタル時計、デジタル温度計、音声・画像のデジタルデータなど。

Q. FAIR原則とはなんですか?

A. データを「見つけられる・アクセスできる・相互運用できる・再利用できる」ように整えるための4原則です。元々は、研究のオープンデータ発祥の考え方です。社内データでも、定められた手続きや権限のもとで活用できるようにする枠組みとして役立ちます。詳しくはNBDCの日本語訳 をご参照ください。

荒瀬光宏

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
代表取締役/DXエバンジェリスト
DX推進・企業変革の専門家。豊富な現場経験と実践知をもとにコンサルティング、企業研修、講演活動を行う。
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