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身近なデジタル化事例が示す進化

「デジタルとアナログの比較」
「デジタル」という言葉を聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。昭和生まれの方にとっては、レコードからCD、MP3プレイヤーへと、アナログ製品が次々とデジタル化していった過程が印象深いはずです。一方、平成以降に生まれた世代では、スマートフォン一台で音楽、写真、動画、通信、辞書などあらゆる機能が完結する環境が当たり前になっています。以下に代表的な事例を列挙します。
- レコード → CD(コンパクトディスク) → MP3プレイヤー、スマホ
- 従来型スチルカメラ → デジタルカメラ → スマホ
- ビデオカメラ → デジタルビデオカメラ → スマホ
- ビデオテープ再生機 → DVD(Digital Versatile Disc)プレイヤー → スマホ
- アナログ時計 → デジタル時計 → スマホ
- 新聞 → オンライン配信型ニュース
- 辞書 → オンライン辞書(Wikipediaなど)
- 手紙 → 電子メール → メッセージングツール、コラボレーションツール
- 手帳 → 電子手帳 → スマホ・パソコンアプリ
- 電話 → IP電話(社内・自宅のIP電話、音声会話アプリ)
- 黒板 → 電子黒板、パソコンアプリ
これらは単に「電気製品の進化」ではありません。以前から電気信号を用いていた機器(電話やカメラなど)も含まれますが、アナログ波形のままではなく、“0か1か”のデジタルデータで情報を表現できるようになった点が本質的な違いです。
デジタル化がもたらす主なメリット
1. データが劣化せずに保管・複製
デジタル化された情報は、何度コピーしても劣化せずに同一品質が保証されます。これにより、オリジナル資産の保護やバックアップ運用が容易になります。
2. 記憶媒体の小型化・大容量化
従来のテープやディスクでは物理的制約が大きかった記憶領域も、半導体メモリやクラウドストレージの進化により、小型・大容量で低コストに保有できます。
3. データ加工・編集・統合の自由度向上
デジタルデータは切り出し、結合、フィルタリングといった操作が瞬時に可能です。これにより、コンテンツ制作や分析作業の効率が飛躍的に向上します。
4. 検索・翻訳・要約による新たな価値創造
テキストや画像、音声など様々な形式のデータがオンライン化されることで、全文検索や機械翻訳、要約アルゴリズムの適用が容易になります。情報探索やグローバル展開の速度が格段に高まります。
企業DXにおける「デジタル」の定義
企業のDXにおける「デジタル化」とは、カメラや電話など個別の製品を電子化するのではなく、事業そのものや商品・サービス、そしてビジネス全体の仕組みをデジタルで最適化することを指します。具体的には、顧客が商品やサービスを利用するたびにデータが蓄積され、そのデータを活用して提供価値やサービス品質を向上させる仕組みを構築することです。また、蓄積したデータに基づき、事業判断や経営判断を超高速で行うことで、PDCAサイクルを圧倒的なスピードで回し続け、自社の競争力や顧客価値を絶えず高める状態を目指します。
変革が求められる理由
しかし、こうした最適化を実現するには、単にデジタル機器を作る以上に高い難易度があります。企業内には既存のマネジメントプロセスやガバナンス、組織文化が根付いており、人が働く以上、これらを変革しなければビジネス全体のデジタル化は達成できないからです。そこで、自社の業務プロセス、組織体制、ガバナンス、企業文化などを一新し、ビジネスをデータ駆動型で再設計することを「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼びます。本気でDXを進めたい企業は、まず「デジタルとは何か」を組織内で共通認識として持つことが不可欠です。
デジタルの定義(デジタルトランスフォーメーション研究所)
弊社では、企業のDXにおける「デジタル」を以下のように定義しています。
「データが電子的に利活用できる状態となっていること」
— 株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
このシンプルな定義には、データを軸に超高速PDCAを回し、変化に即応できる組織メカニズムを築くという意図があります。データが組織内を血流のように循環し、その情報をもとにサービスや顧客の状態を常に把握・診断し、自ら進化し続ける仕組みを商品・サービスや事業に実装することこそがデジタルトランスフォーメーションです。DXの成功には、組織や事業を再設計し、それに見合ったリソースと情熱を注ぐことが必要不可欠です。
DX推進に向けた用語統一の重要性
「デジタル化」と混同されがちな「IT化」との違いも含め、用語の定義を組織内で共通認識として持たないと、担当者ごとに異なるDX像が進行してしまいます。プロジェクト開始前にビジョン策定と並行して、用語統一を実施し、ステークホルダー間のズレをなくすことが成功の鍵となります。
執筆者:デジタルトランスフォーメーション研究所 代表取締役 DXエバンジェリスト 荒瀬光宏|荒瀬光宏 プロフィール
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