ITは情報を処理・保存・伝達するための技術、デジタルは情報を飛び飛びの値(数字・符号)で表す方式です。両者は密接に関係していますが、指している対象が異なります。
本記事では、ITとデジタルの意味を比較し、IT化・デジタル化・DX(デジタルトランスフォーメーション)の関係を具体例で整理します。そのうえで、ビジネスにおいて技術という「手段」と、実現したい「目的」を分けて考える視点を解説します。
ITとデジタルの違い【意味と関係を比較】
ITは「Information Technology」の略で、日本語では「情報技術」と訳されます。デジタルは、情報を飛び飛びの値(数字・符号)で表す方式です。コンピューターでは通常、0と1の組み合わせで扱います。
| 項目 | IT | デジタル |
|---|---|---|
| 意味 | 情報を処理・保存・伝達するための技術 | 情報を数字や符号の飛び飛びの値で表す方式 |
| 着目する点 | 情報をどのような技術で扱うか | 情報をどのような形式で表すか |
| 例 | コンピューター、ソフトウェア、ネットワーク | 数値や符号で記録された文字・画像・音声 |
現在のITの多くは、デジタルデータを扱っています。例えば、写真をデジタルデータとして記録し、それをソフトウェアで加工したり、ネットワークで共有したりします。このように、デジタルという情報の表現方式と、ITという情報を扱う技術は、組み合わせて使われます。
IT化・デジタル化・DXの違いを具体例で整理
「IT化」と「デジタル化」は、重なる意味で使われることもある言葉です。ここでは、IT化は技術やシステムの導入・活用、デジタル化は情報のデータ化や、データを活用した業務の見直しという観点で整理します。
機械メーカーを例に、IT化・デジタル化・DXで着目する点を比較してみましょう。
| 用語 | 着目する点 | 機械メーカーの例 |
|---|---|---|
| IT化 | どの技術・システムを導入、活用するか | 設備管理システムやセンサーを導入する |
| デジタル化 | 情報や仕事の進め方をどう変えるか | 紙の点検記録をデータ化し、保守の手配まで連携する |
| DX | 顧客への価値提供と事業・組織をどう変えるか | 稼働データを使い、機械販売に加えて、設備の停止時間を減らす保守サービスを事業化する |
※同じ取り組みが複数に当てはまることもあります。
IPA(情報処理推進機構)では、情報をデジタルデータに変える「デジタイゼーション」と、業務プロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」を、デジタル化の取り組みとして説明しています。DXでは、これらを活かし、ビジネスモデルや組織の変革を通じて新たな価値や競争力につなげます。
この3つの違いは、別記事の「デジタイゼーション・デジタライゼーション・DXの違い」で図解しています。
IT化は、データ化にも事業変革にも関わる共通の手段です。必ず「IT化、デジタル化、DX」の順番に進めるという意味ではありません。実現したい顧客価値から、必要な技術と変革の範囲を考えることが大切です。
ITという手段を、デジタルで実現する目的につなげる
「ITは手段、デジタルは目的」。これは、技術の導入から、利用者に提供する価値へと視点を広げるための、本稿のビジネス上の捉え方です。ここでいう「目的」は、デジタル化そのものではなく、デジタルを活用して実現したい顧客価値や事業の成果を指します。
例えば、設備管理システムの導入では、データを正しく収集できることや、システムが安定して動くことが重要です。さらに利用者の立場から、「故障の兆候を把握して、設備の停止時間を減らせるか」と考えると、集めるデータや保守の仕組み、サービスの提供方法まで見直す必要が出てきます。

業務効率化と価値創造は、両立するものです。保守の手配を効率化することが、顧客の待ち時間の短縮にもつながります。大切なのは、導入した機能を、誰にとっての、どのような価値につなげるのかを明確にすることです。
組織で用語と目的の共通認識を持つ
IT部門やデジタル推進部門の役割分担は、企業によって異なります。システムの安定運用を担う人と、新しいサービスを企画する人が、同じ目的に向けて連携することが重要です。
言葉の定義論争に時間を費やすより、「自社ではITやデジタルをどういう意味で使い、何を実現するのか」という共通認識を持ちましょう。具体的には、次の3つの問いを共有すると、取り組みの方向をそろえやすくなります。
- 誰の、どのような不便や課題を解決するのか。
- 情報・業務・事業のどこまでを変えるのか。
- 導入後、何が改善したら成功と判断するのか。
例えば、社内の処理時間だけでなく、顧客の設備停止時間も成果の指標にすれば、効率化と顧客価値を結び付けて評価できます。技術を導入することと、その技術で成果を生むことをつなげる共通認識が、DXを進める土台になります。
社内で用語と目的の共通認識をつくりたい方は、当研究所のDX基礎研修をご覧ください。対象者や課題に応じたDX研修サービス、DX講演・セミナーもご案内しています。
「デジタル」の意味や「DX」の定義をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
代表取締役/DXエバンジェリスト
DX推進・企業変革の専門家。豊富な現場経験と実践知をもとにコンサルティング、企業研修、講演活動を行う。
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