目次
SNS炎上事件の概要と背景
炎上の経緯
2023年1月、岐阜県内のスシロー店舗で高校生が醤油ボトルや湯呑みを舐める様子を撮影した動画がSNSに投稿され、一瞬にして拡散。投稿から数時間で批判が殺到し、あきんどスシローは2月1日に謝罪とキャンペーン中止を発表。大阪地裁に約6700万円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。
参考:東洋経済オンライン記事へのリンク→ https://toyokeizai.net/articles/-/679364
社会的反響とマーケットへの影響
炎上後、SNS上では賠償請求を支持する声と過剰対応を懸念する声が交錯。報道を受けて親会社の株価にも一時的な動揺が見られ、企業はブランドガバナンスの脆弱性を露呈しました。専門家の城戸譲氏は「想像力のない投稿者にはSNSの拡散力が過酷」と指摘し、個人の判断力不足が根本原因であると論じています。
SNS空間におけるリスク認知の齟齬
SNSはいわば公開プラットフォームであり、匿名性とスピード拡散が特徴です。若年層はツール操作に長ける一方で、投稿の社会的影響や法的責任を認識しづらく、自己効力感とリスク認知のギャップが炎上を誘発します。
リアルとデジタルの規範差
リアル空間での公共マナーは経験から学べるものの、デジタル空間では行動規範が曖昧になりがちです。「ウケ狙い」の投稿が公共的価値を侵害しやすく、結果として個人の社会的信用を失墜させるリスクが高まります。
坂村健氏が提唱するデジタル教育の三分野
東洋大学情報連携学部長の坂村健氏が示された「デジタル教育の3分野」は以下の通りです(Wikipedia:坂村健氏)。
- CS(コンピュータサイエンス):アルゴリズムやプログラミング、ネットワークの仕組みを学び、問題解決力と技術基盤を養う。
- IT(インフォメーションテクノロジー):Web検索やビジネスツールの実践的スキルを習得し、情報収集と業務効率を高める。
- DL(デジタルリテラシー):SNS投稿時のマナー、誹謗中傷防止、デマ識別、個人情報保護など、情報社会で適切に判断・行動する能力。
教育プログラム整備の方向性
個人レベルでは、各分野を統合した学習機会が必要です。たとえば、CS・ITの基礎を身につけた後にDLに焦点を当て、具体的な炎上事例を分析するワークショップが有効でしょう。また、SNS投稿前のセルフチェックリストや家庭内でのデジタル対話の場を設けることも推奨されます。
まとめ:社会と個人の責任としての学び
スシローのSNS炎上は個人のデジタルリテラシー不足が招いた典型例です。CSとITで得たスキルを、DLの視点で「誰に」「何を」「どのように」発信するかに結びつけることで、拡散リスクを低減できます。今後は学校や地域、家庭で三分野をバランスよく学ぶ機会を整備し、個人一人ひとりがデジタル社会の健全性を支える担い手となることが求められます。
執筆者:デジタルトランスフォーメーション研究所 代表取締役 DXエバンジェリスト 荒瀬光宏|荒瀬光宏 プロフィール
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