デジタルガバナンス・コードとは?最新3.0の要点とDX認定を解説

デジタルガバナンス・コードは、経済産業省が、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める経営者に求められる取り組みをまとめた指針です。データとデジタル技術を活用し、事業や組織をどう変え、企業価値の向上につなげるかを示しています。

この記事でわかること

  • 最新版3.0の全体像と、3つの視点・5つの柱
  • DX推進ガイドラインからの変遷と、2.0から3.0への変更点
  • DX認定制度との関係と、自社で取り組む際のポイント

本記事では、最新版3.0を軸に、公式資料の用語をかみ砕いて解説します。まず全体像をつかみ、必要に応じて原典や関連記事で詳しく確認できる構成です。

社内での共通理解づくりや、経営層のビジョン・戦略の検討には、DX研修サービスもご活用いただけます。

デジタルガバナンス・コードとは?目的とこれまでの変遷

デジタル技術やデータ活用が広がると、顧客の行動や競争の仕組みも変わります。企業には、こうした変化を踏まえ、どのような価値を提供し、どう成長していくかを考えることが求められます。

デジタルガバナンス・コードは、その検討と実行を支える指針です。上場・非上場、大企業・中小企業を問わず、個人事業主も含む幅広い事業者を対象としています。

ここでいうガバナンスは、経営者や取締役会が方針を示し、取り組みの進み具合やリスクを確認する仕組みです。DXを経営課題として捉え、事業・組織・人材・ITを一体で考えることが重要になります。

現在のコードは、2018年のDX推進ガイドラインなどを踏まえ、次のように整備されてきました。

時期 指針・版 位置づけと主な変化
2018年12月 DX推進ガイドライン Ver.1.0 DXを実現するための経営のあり方・仕組みと、ITシステムの構築を整理。
2020年11月 デジタルガバナンス・コード 経営ビジョンの策定・公表など、DXを進める経営者に求められる対応を整理。
2022年9月 デジタルガバナンス・コード2.0 DX推進ガイドラインと統合。人材の育成・確保など、環境変化を踏まえて改訂。
2024年9月 デジタルガバナンス・コード3.0 DX経営による企業価値向上を明確化。全体像を3つの視点・5つの柱に再整理。

旧ガイドラインの詳しい構成は、経済産業省 DX推進ガイドライン Ver.1.0 の解説をご覧ください。ここからは、最新版3.0の内容を見ていきます。

デジタルガバナンス・コード3.0の全体像

3.0では、DX経営に求められる内容を「3つの視点」と「5つの柱」で整理しています。3つの視点は取り組む際に意識すること、5つの柱は企業が具体的に取り組む項目です。

3つの視点:経営とDXの取り組みをつなげる

  • 経営ビジョンとDX戦略の連動:会社が目指す姿を実現するために、データとデジタル技術をどう活用するかを考えます。
  • As is-To beギャップの定量把握・見直し:現状と目指す姿の差を数値で捉え、取り組みの結果を踏まえて戦略を見直します。
  • 企業文化への定着:戦略の実行を通じて、データに基づく判断や新しい挑戦など、目指す仕事の進め方を組織に根付かせます。

5つの柱:企業が取り組む項目

  1. 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
  2. DX戦略の策定
  3. DX戦略の推進(組織づくり/デジタル人材の育成・確保/ITシステム・サイバーセキュリティ)
  4. 成果指標の設定・DX戦略の見直し
  5. ステークホルダーとの対話

方針に沿って体制を整えて実行し、成果を確かめ、関係者との対話も踏まえて継続的に見直していきます。

デジタルガバナンス・コード3.0の全体像:DX経営に求められる3つの視点と5つの柱
デジタルガバナンス・コード3.0の全体像。3つの視点を意識しながら、5つの柱に沿ってDXを進めます。
出典:経済産業省『デジタルガバナンス・コード3.0(PDF)』

原典の読み方:基本的事項と望ましい方向性

各柱は、「基本的事項」と「望ましい方向性」の2つに分かれています。「基本的事項」の中には、「柱となる考え方」と「認定基準」があります。

  • 柱となる考え方:その項目で企業や経営者に求められる取り組みの考え方を示します。
  • 認定基準:DX認定制度の要件に対応する事項を示します。
  • 望ましい方向性:企業価値の向上に向け、さらに取り組みを深める際の方向を示します。

概要を知りたい方は「柱となる考え方」を、認定取得を検討する方は「認定基準」も確認すると、目的に応じて読み進められます。「基本的事項」という名称は、すべての企業に一律の法的義務があるという意味ではありません。

5つの柱をわかりやすく解説

ここでは、それぞれの柱が自社の経営や仕事にどう関わるかを解説します。最後に、5つの柱のつながりを製造業の例で整理します。

1. 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定

データ活用やデジタル技術の進化によって、市場や顧客がどう変わり、自社にどのような機会やリスクが生まれるかを考えます。そのうえで、会社が目指す姿と、それを実現するビジネスモデルを描きます。

ビジネスモデルとは、誰に、どのような価値を、どのような仕組みで届けるかという事業の成り立ちです。例えば、製品を販売する事業から、稼働データを使って故障を予防するサービスへ広げることも考えられます。

DX認定では、こうした環境変化を踏まえた経営ビジョンとビジネスモデルの方向性を公表していることが求められます。

2. DX戦略の策定

描いたビジョンを実現するために、データとデジタル技術を活用して何を変えるかを具体化します。顧客との接点、商品・サービス、業務の流れなど、変える対象と取り組みの方向を明確にします。

例えば「納期回答を早める」という方針であれば、受注・在庫・生産計画の情報をつなぐ必要があるか、部門間の仕事の進め方をどう変えるかを考えます。DX認定では、ビジネスモデルの実現に向けたDX戦略の公表が求められます。

戦略の検討を具体的に進めたい方は、DX戦略の立て方と策定プロセスもご覧ください。環境分析から戦略を組み立てる流れを解説しています。

3. DX戦略の推進

戦略を実行するための準備を、組織・人材・ITの3つの面から整えます。

3-1. 組織づくり

誰が責任を持ち、どの部門が協力するかを明確にします。社内の役割分担に加え、外部の企業や専門家との協業も含め、戦略を進める体制を考えます。

3-2. デジタル人材の育成・確保

戦略の実行に必要な人材やスキルを整理し、社内での育成、採用、外部人材の活用などの方策を定めます。専門人材だけでなく、経営者や管理職、現場の社員が、それぞれの役割に応じて理解を深めることも重要です。

3-3. ITシステム・サイバーセキュリティ

必要なデータを使えるように、ITシステム環境の整備方針や投資計画を明確にします。古いシステムが変更やデータ連携を妨げている場合は、その見直しも検討します。あわせて、事業の継続や情報の保護に必要なサイバーセキュリティ対策を進めます。

4. 成果指標の設定・DX戦略の見直し

戦略の達成度を確かめるため、成果指標(KPI)を定めます。ツールを導入した数や研修の受講者数だけでなく、納期、顧客満足、売上・利益など、目指す成果とのつながりを考えることが大切です。

例えば、調達部門が購入価格の低さだけを追求すると、納期の不安定さが他部門の負担になることがあります。各部門の指標を会社全体の成果につなげる考え方は、全体最適と部分最適の違いで詳しく解説しています。

DX認定では、戦略の達成度を測る指標の公表が求められます。実際の推進では、指標に基づいて成果を評価し、課題や環境変化を踏まえて戦略を見直します。

5. ステークホルダーとの対話

ステークホルダーとは、投資家、取引先、従業員など、企業と関わる人や組織です。経営ビジョンや戦略、取り組みの成果を示し、意見を交わして理解と協力を得ます。

その際には、どのような価値を生み出し、それが自社の成長にどうつながるかを、一連の「価値創造ストーリー」として説明することが重要です。DX認定では、経営者自身が経営ビジョンやDX戦略について対外的にメッセージを発信していることが求められます。

5つの柱のつながり:製造業で考える例

以下は、5つの柱のつながりを理解するために作成した架空の製造業の例です。

柱 自社で考えること 具体例
1. ビジョン・ビジネスモデル どのような価値を届けるか 小口注文にも短納期で応え、顧客に選ばれる企業を目指す。
2. 戦略 実現のために何を変えるか 受注・在庫・生産計画のデータをつなぎ、納期回答を早める。
3. 推進 どのような体制・環境で進めるか 営業と製造の共同チーム、育成計画、IT環境と安全対策を整える。
4. 指標・見直し 成果をどう確かめるか 納期遵守率、回答時間、利益などを確認し、取り組みを見直す。
5. 対話 方針と進捗をどう伝えるか 経営者が取引先や従業員に方針・進捗を伝え、意見を聞く。

このように、5つの柱をつなげて考えると、デジタル活用の目的と、実行に必要な準備、成果の確認方法を整理できます。

2.0から3.0で何が変わったのか

3.0では、副題に「DX経営による企業価値向上に向けて」が加わりました。経営者に伝わりやすくするために構成を見直し、データ活用・連携、人材、サイバーセキュリティなどの重要性を強調しています。

4つの柱から5つの柱へ再整理

2.0は「ビジョン・ビジネスモデル」「戦略」「成果と重要な成果指標」「ガバナンスシステム」の4つの柱でした。組織・人材・IT環境は「戦略」の中で扱われていました。

3.0では、戦略の「策定」と「推進」を分け、成果の確認と戦略の見直し、ステークホルダーとの対話を明確にしています。人材の育成・確保は「DX戦略の推進」の中の1項目として、組織づくりやIT環境とともに整理されています。

  • 経営とDXのつながりを明確化:3つの視点を示し、経営ビジョンと戦略、現状と目標の差、企業文化を結び付けました。
  • 原典の構成を簡潔に:2.0の「取組例」を「望ましい方向性」に統合しました。
  • 実行上の重点を具体化:データ活用・連携、人材のスキル可視化や育成、経営層の意識改革、サイバーセキュリティ等を重視しています。

2.0の全体構造(旧版との比較)

旧版デジタルガバナンス・コード2.0の全体構造:4つの柱と基本的事項・望ましい方向性・取組例
旧版2.0の全体構造。4つの柱で整理され、各柱には「基本的事項」「望ましい方向性」「取組例」が設けられていました。最新版3.0との比較用に掲載しています。
出典:経済産業省『デジタルガバナンス・コード2.0(PDF)』

2.0を参照する場合は、この旧版の構造と、前半で説明した3.0の構造を区別してください。これから取り組みを整理する際は、最新版3.0を基準にすると、現在の認定制度との対応も確認しやすくなります。

DX認定制度との関係と取得メリット

DX認定制度は、デジタルガバナンス・コードに対応し、DXを推進する準備が整っている事業者を国が認定する制度です。DXの成果や達成度そのものを認定する制度ではありません。

コードは、企業が取り組む内容を整理するための指針です。認定取得を目指す場合は、その「基本的事項」に含まれる認定基準と、IPAが公表する最新の申請ガイダンスに沿って準備します。

DX認定を取得する主なメリット

  • 取り組みの対外発信:認定事業者一覧への掲載や認定ロゴの使用により、DXに取り組む企業であることを伝えられます。
  • 支援施策への活用:金融支援や人材育成の施策で、優遇・助成等の要件として活用できます。利用には各施策の条件を満たす必要があります。
  • DX銘柄・DXセレクションへの応募:上場企業向けのDX銘柄、中堅・中小企業等向けのDXセレクションにつながります。各制度の応募条件は別途確認します。

申請準備で確認する主な事項

  • 経営ビジョン、ビジネスモデルの方向性、DX戦略を公表しているか。
  • 戦略を進める体制、人材の育成・確保、ITシステム環境の整備方針を示しているか。
  • 戦略の達成度を測る指標を公表し、経営者が対外的にメッセージを発信しているか。
  • サイバーセキュリティ対策など、申請に必要な各事項を確認しているか。

上記は概要です。具体的な公表内容や申請要件は、IPAのDX認定制度の案内で確認してください。申請は、DX推進ポータルのウェブフォームから行います。

よくある質問

Q1. デジタルガバナンス・コードへの対応は義務ですか?

A. コードは、企業のDXに関する自主的な取り組みを促すものです。すべての企業に、コード全体への対応やDX認定の取得を一律に義務付けるものではありません。認定を申請する場合は、所定の認定基準を満たす必要があります。

Q2. DX認定では3.0の内容をすべて満たす必要がありますか?

A. 申請は、3.0に対応した現行の認定基準に沿って準備します。一方、「望ましい方向性」に記載された取り組みのすべてが、そのまま認定の必須条件になるわけではありません。「認定基準」と「望ましい方向性」を区別して確認してください。

Q3. DX認定の取得に向けて、まず何から着手すべきですか?

A. 経営者と関係部門で、目指す姿と現状の課題を共有することから始めます。そのうえで、次のように準備を進めます。

  1. 現状と方針を共有する:環境変化と自社の課題を整理し、経営ビジョンやビジネスモデルの方向性を検討します。現状把握には、DX推進指標も活用できます。
  2. 戦略と実行の準備を整える:DX戦略、推進体制、人材育成、IT環境、成果指標などを具体化します。
  3. 公表内容と申請要件を確認する:必要な情報をWebサイト等で公表し、経営者の情報発信やセキュリティ対策を含め、最新の申請ガイダンスと照合します。

経営層での共通理解づくりや、自社のビジョン・戦略の検討には、経営者・役員向けDX研修もご活用いただけます。

まとめ:経営戦略としてのDX推進を

デジタルガバナンス・コード3.0は、経営ビジョンとDX戦略をつなぎ、組織・人材・ITの準備、成果の確認、関係者との対話までを一体で考えるための指針です。

まずは5つの柱に沿って、自社で決まっていることと、これから検討することを整理してみてください。DX認定の取得を目指す場合も、こうした準備を進めたうえで、最新の認定基準と照合することが大切です。

自社のビジョン・戦略を具体化したい方へ

デジタルトランスフォーメーション研究所では、DXの共通理解づくりから、経営層によるビジョン・戦略の検討まで、目的に応じた研修を提供しています。

荒瀬光宏

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
代表取締役/DXエバンジェリスト
DX推進・企業変革の専門家。豊富な現場経験と実践知をもとにコンサルティング、企業研修、講演活動を行う。
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