【2024年度DX研修実績と開催傾向】年会開催年間100回、累積受講者10万人突破

2024年度は、企業・自治体向け研修を年間約100件実施し、累計受講者数は10万人に達しました。これもひとえに皆様のご支援の賜物です。

デジタルトランスフォーメーション研究所創業当初は、「DXを通じて日本の競争力を高める」という使命を掲げながらも思うような貢献ができず、もどかしさを感じていました。しかし現在は、多くの組織で価値創造や変革の成果が表れ始め、「日本の競争力向上」に確かな手ごたえを得ています。

新年度も、内部の力だけでは実現が難しい組織変革を支援し、より多くの組織のデジタル競争力向上に寄与してまいります。以下では、2024年度の研修傾向と成功のポイントをまとめます。

DXリーダー研修 ~価値創造型DX企画の増加

せっかくDX時代の価値創造スキルを学ぶのであれば、事業に直結する企画を検討しようという方針のもと、実テーマを用いた価値創造型DX企画を立案する研修が増えています。

グループワークを中心とした高い実践性を備えたカリキュラムで、ケーススタディやサンプルテーマではなく、実際に組織として価値あるDX企画を策定する点が特長です。参加者の意欲が高まりやすく、最終日には役員や社長の前でプレゼンテーションを行う機会が設けられることもあります。さらに、成果を重視する観点から、必要に応じてグループ単位のメンタリングによる個別支援を用意しています。

研修主催部門の傾向

このDXリーダー研修を依頼される部門は、主に次の四つのパターンに分かれます。

  • 人事研修部門
  • 情報システム部門
  • 経営企画部門
  • DX推進部門

興味深いことに、どの部門から依頼を受けるかによって、その研修や組織のDXの成熟度をある程度推察できます。以下では、それぞれの特徴について触れたいと思います。

人事研修部門

デジタル技術の習得を目的とする他のスキル研修と同列に企画されるケースが多く、「DXで何を実現したいか」という経営層の意思が十分に反映されていない場合が散見される。

情報システム部門(IT部門)

DXでは組織変革の要素が重視されるため、本来はIT部門が主管するのは適切とは言えないが、会社がDXをIT分野の活動と捉えていること、また組織がDXの初期段階にあることが推測できる。

経営企画部門

中長期経営計画を担当する経営企画の活動の一環としてDXを位置付けており、DX時代にどのような経営戦略や事業戦略を実行するかについて、計画を一括して立案しやすい。

DX推進部門

DX推進専門組織が発足し、DX研修を重要施策として位置付けている。DX研修の設計をDX全体の設計と一体で検討するため、具体的な成果につながりやすい。

DXリーダー研修の設計ポイント

DXリーダー研修には、スキル獲得を優先するケースと成果を重視するケースがあります。
実テーマを用いた成果重視型の研修では「成果を最優先する」という姿勢の企業もあれば、「まずはスキル習得を重視し、成果が得られれば幸い」という温度感の企業も見受けられます。
いずれの場合も、実行可能な企画への具体化を成果として期待するのであれば、以下に示すような研修の「外側の設計」が重要になります。研修には「内側の設計」と「外側の設計」が存在しますが、外側の設計とは、研修を自社のDXや事業の中でどのように位置付け、戦略的に活用するかを定める重要な枠組みです。

テーマ選定の設計

テーマを選定する際には、たとえ優れた企画であっても、会社の方針やDX基本方針と齟齬があれば実行に移せません。DX基本方針や事業部方針との整合性を前提に、組織が重視するテーマ(または分野)を選定する必要があります。

グループ編成の設計

DX関連企画は、通常、複数部門にまたがる関係者が協働して進める必要があるため、テーマに沿った部門間連携が欠かせません。重要テーマに取り組み、具体的なDX企画を立案するグループワークである以上、上司や事業担当役員が十分に納得したうえでアサインすることが望まれます。

研修後プロセスの設計

研修で優れた企画を立案しても、評価し次の段階へ進める意思決定の仕組み、実践的に取り組む体制、課題を特定して変革施策を実行するDX推進部門の支援がなければ、研修だけで終わってしまいます。
研修時のグループ編成と、実際に企画を遂行するメンバーは必ずしも一致しません。役員が「業務の片手間で企画を実現せよ」と講評してしまうと、何も進まないばかりか関係者のモチベーションを大きく損ないます。
研修後も継続的にアサインできる仕組みを用意したり、研修後から企画に参加できる制度を設けたりするなど、組織に適した実行体制をあらかじめ構想しておくことが重要です。

参考:DXリーダー研修【価値創造型DX企画プログラム】ページはこちら

経営層DX研修 ~DXビジョン策定の重要性が浸透

3つ目の大きなトピックは、2024年度に経営層DX研修の実施機会が急増したことです。

経営層DX研修では、「DXとは何か」「なぜ今DXが求められるのか」「自社を取り巻く環境はどう変化するのか」「自社はどのような方向へ変革すべきか」を集合形式で学び、経営層自らが考え、組織の方向性を策定します。2〜3回の開催を通じてDXビジョンの骨子をアウトプットすることが目標です。本研修が不可欠なのは、経営層がリードするDXビジョン(基本方針)がないまま「DXせよ」と発信しても、具体的にどう変わるべきか、どの戦略・ビジネスモデル・組織行動を目指すのかが不明確なままとなるためです。ビジョンなきDX活動がまったく無意味とは言いませんが、現場の努力が報われず、日本で最も多い失敗例である「空中分解するDX」を招きがちです。

この5〜6年間、当社は経営層DX研修の必要性を訴えてきましたが、「経営層を研修に出すのか」という抵抗が大きく、実現は容易ではありませんでした。

しかし2024年度は、経営層主導のDXビジョンを持たずに数年間試行錯誤した企業が「ビジョンなくしてDX成功なし」と確信し、経営層DX研修の依頼が一挙に増えました。経営層が全社視点で取り組むべき事項を共通理解とし、自ら基本方針を示し、現場をリードできる状態を整えることほどDXにおいて重要なことはありません。実際に、組織のDXが大きく加速する場面を多く確認できました。この傾向は2025年度以降も強まると見込んでいます。なお2024年度は、DXビジョン策定の途中で事業ビジョンや中期経営計画の立案プロジェクトに発展する例もありました。DXビジョンの策定と、DX要素を踏まえた経営計画の立案は近接したプロセスであり、最終的に整合させる必要があるため、自然な流れと言えます。

参考:経営層向け DX 研修【企業変革を牽引するエグゼクティブプログラム】ページはこちら

デジタルスキル標準(経産省、IPA)対応研修 ~「ビジネスアーキテクト研修」など

2024年度の主要トピックの一つは、経産省(IPA)によるデジタルスキル標準の更新(初版:2022年12月、以後順次改訂)です。この動きは、多くの企業にとって社員のスキルを組織的に向上させる契機となりました。多くの企業では、「国が示している以上、自社でもスキル教育に取り組まなければならない」という理由付けとして機能し、その結果「ビジネスアーキテクト研修を実施してほしい」というニーズが急増しました。

しかし、研修予算を拡大し、人事部主導で研修や資格取得を推進した企業の過半数は、目的を見失い、成果の時期や内容が不透明な状況に陥っています。ビジネスアーキテクト研修を依頼される際に「研修開催の目的・目標を教えてください」と伺うと、うまくいかない企業の多くが「年間500名育成」といった数量目標のみを掲げ、「DXで何を実現するのか」「どの課題を克服するのか」といった具体的テーマを設定していないのが実情です。

DXは企業を変革し価値を高める手段であり、研修はその一要素にすぎません。目的が明確でないままDX施策や研修を乱発すれば、かえって組織の生産性を阻害し、得られる成果も限定的となります。まずは「変革で何を実現したいのか」という目的を明確に定義したうえで着手することが重要です。

自治体におけるDXサービスデザイン研修

自治体では国の支援を追い風に、都道府県だけでなく市町村でもDX研修が増加し、サービスデザイン研修の提供も拡大しています。対象は現場DXリーダー層と中間管理職層の二層が中心で、基礎自治体が主導し複数自治体が合同で受講するケースも見られます。ただし、多くの場合、スキル習得にとどまり、研修を実行へつなげる「外側の設計」まで踏み込めていないのが実情です。

多くの自治体はいまだデジタル化に苦戦しており、本格的なDXに着手できているのは東京都など人材が豊富な組織に限られている印象です。従来業務の部分的なデジタル代替にとどまれば、日本が国際競争で後れを取る要因となり得るため、より踏み込んだ変革が求められます。行政は民間企業以上に既存の組織行動や構造が阻害要因となりやすく、それらの克服が不可欠です。

急速な少子高齢化をはじめとする社会課題が山積する中で、国民が主体的に変革へ参画できる環境を整備し、デジタル競争力を高める取り組みを加速させることが急務です。

荒瀬光宏

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
代表取締役/DXエバンジェリスト
DX推進・企業変革の専門家。豊富な現場経験と実践知をもとにコンサルティング、企業研修、講演活動を行う。
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