そもそもDX研修とは何か
DX研修とは、企業が デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できる人材 を体系的に育成するための社内教育プログラムです。
従来の IT スキル習得講座にとどまらず、戦略立案から組織運営まで「ビジネス変革を実現する力」を身につける点が特徴です。
従来のIT研修との違い
従来の IT 研修 | DX 研修 |
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システム/ツール操作の習得が中心 | ビジネスモデル変革・組織変革まで視野に入れる |
個々の担当者スキル向上が目的 | 部門横断で「共通言語」と「推進体制」を形成 |
受講後は現場任せになりがち | 研修内でプロジェクト案を作り実装フェーズへ接続 |
社会的背景 ― DXが“待ったなし”になった理由
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少子高齢化で市場・働き手の構造が変わる――2070年に総人口は約8,700万人、高齢化率は約39%へ。中長期で労働力制約が強まり、生産性向上と付加価値創出が不可欠です。
出典:国立社会保障・人口問題研究所(2023年推計・結果の概要) -
生産性の伸び悩み――日本の時間当たり労働生産性は56.8ドルでOECD38カ国中29位(2023年)。既存業務のデジタル化だけでは限界があり、業務設計や顧客価値の再設計が要件です。
出典:日本生産性本部『労働生産性の国際比較2024 概要』 -
国際的なデジタル競争力の課題――IMDのWorld Digital Competitiveness 2024で日本は31位。人材・アジリティ・将来準備の強化が急務とされています。
出典:IMD『World Digital Competitiveness 2024 Japan』 -
レガシーシステムと技術負債――経産省のDXレポートは、刷新が進まない場合に「2025年以降、最大12兆円/年の経済損失」の可能性を指摘。データ活用前提の業務・システム再構築が必要です。
出典:経済産業省『DXレポート(サマリー)』 -
政策ドライブの加速――政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2025年6月13日閣議決定)で行政・準公共・産業のデジタル化を横断推進。企業にもデータ連携・クラウド活用が広く波及します。
出典:デジタル庁『重点計画』
以上の背景から、単なるITツール導入ではなく「顧客価値の再定義」「業務・組織・人材の再設計」まで踏み込むDXを推進できる人材育成=DX研修が、企業の持続的競争力の前提になっています。
なぜ研修がDX推進成功のカギとなるのか
- スキルギャップの解消
・<基礎層>「DX とは何か?」を学び共通言語を作ることで、現場の抵抗感を低減。
・<リーダー層> 新価値創造のためのビジネス課題分析やアイデア発想法を習得し、実践へ橋渡し。 - プロジェクト創出の触媒
自社課題を題材にワークショップを行い、研修直後にDXアイデア → DX企画案 → 社内提案 まで持ち帰れる。 - 経営層コミットメントの醸成
経営トップが研修で DX ビジョンを具体化 し、変革の優先順位と投資判断を明確にする。
DX研修の主なタイプ(概要)
全社員向けリテラシー研修
(DX基礎研修)
目的:共通言語化・抵抗感払拭
代表的テーマ例:
- DX基礎1 — “D”デジタルとは / “X”トランスフォーメーションとは
- DX基礎2 — 第四次産業革命と競争原理
推進リーダー研修
(DXリーダー研修)
目的:施策立案・プロジェクト推進
代表的テーマ例:
- DX 戦略の類型と事例(攻めのDX / 守りのDX)
- 戦略策定と実行(デザイン思考・カスタマージャーニー)
経営層向けDX研修
目的:戦略策定・投資判断
代表的テーマ例:
- DX と企業ビジョン
- ガバナンス強化・ロードマップ設定
DX研修の3つの目的
DXは、デジタル(手段)を活かし、デジタル時代(背景)に適応するために事業と組織を変革することです。研修の狙いは、用語やツール習得そのものではなく、組織が自走して変革に踏み出し続けるための土壌・人・方針を整えることにあります。以下の3点を重視します。
1. 共通認識と“変革の土壌”づくり(Why × 共通言語)
部門や職種ごとにばらつきがちな「DXの意味」を一本化し、「なぜ今、何を変えるのか」を自社の文脈で腹落ちさせます。手段先行を避け、まずは顧客・市場・競争の変化を起点に、変革の必然性を共有します。
そのうえで、自社を取り巻く環境変化の理解、現状の課題認識、自社がどんな価値を提供しているかの共通認識を揃え、全社で同じ地図を持つ状態をつくります。
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2. 価値創造を牽引する実践的リーダー育成(企画しながら学ぶ)
“学んでからやる”ではなく、“企画しながら学ぶ”進め方で、推進の中核となる人材を実践的に育てます。実在の顧客課題を「誰の、どんなジョブの、どんな課題か」で整理し、カスタマージャーニーで体験を分析。リアル×デジタルの接点で提供価値を設計し、最終的にDX企画をプレゼンまで仕上げます。
注釈:ジョブ=顧客が成し遂げたい進歩や片づけたい用事のこと/カスタマージャーニー=顧客が目的達成に至るまでの体験の一連の流れ。
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3. 経営と実務をつなぐ“橋渡し”(ビジョン・方針)
現場の企画が孤立しないよう、経営の意思と前提を合わせ込みます。研修内でDXビジョン骨子(全社/事業別)を作成し、変革の拠り所を明確化します。
- 現状分析:上位目的(企業理念)、環境変化
- 戦略変革方針:誰に、どんな価値を、どのように提供するか
- 組織変革方針:ヒト、マネジメント・組織形態、プロセス(データ利活用)
その後、戦略・組織それぞれについて「あるべき姿/課題/対策案」を整理します(推進体制・役割の設計は必要に応じて実施)。
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DX研修で得られる3つの効果
1. 合意形成と横断連携が加速する
ばらつきがちな「DXの意味」「なぜ・何を変えるか」の前提が揃い、部門間の擦り合わせが短縮されます。用語・判断基準・優先順位の共通化により、会議の往復や個別最適の衝突が減り、企画のスタートラインに素早く立てるようになります。
- 共通言語で議論が進む
- 依頼↔対応の行き違いが減る
- 全社の“今やるべきこと”が明確になる
2. 顧客価値起点のDX企画が“形になる”
“学んでからやる”ではなく“企画しながら学ぶ”進め方で、現実のテーマがプレゼン可能な案に仕上がります。実在の顧客課題を「誰の、どんなジョブの、どんな課題か」で整理し、カスタマージャーニーで体験を可視化。リアル×デジタルの接点で提供価値を設計し、社内提案に耐えるストーリーへまとめます。
- 顧客セグメント×ジョブの仮説が明確
- 提供価値と体験の流れが一枚で説明できる
- “まずどこから始めるか”が決まる
3. 経営の意思決定が速く、迷いが減る
研修で作るDXビジョン骨子(全社/事業別)を拠り所に、Who(誰に)・What(どんな価値を)・How(どう届けるか)と、組織変革の方向性を言語化。これに沿って案件の優先順位付けや“やる/やらない”の判断が揃うため、現場の企画が孤立せず前に進みます。
- 投資・リソース配分の基準が共有される
- 止める判断がしやすくなる
- 経営と現場の会話が具体化する
DX研修の進め方ステップ
よくある質問(FAQ)
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グローバルに事業を展開し、化学品・食品・ライフサイエンス分野で人々の暮らしを豊かにしてきた株式会社ADEKA。同社は2024年度、中期経営計画「ADX2026」の中核施策としてDX推進を掲げ、全社的な変革を加速させています。
その起点となったのが、デジタルトランスフォーメーション研究所の「DX基礎研修」です。
研修を主催したDXプロジェクトメンバーの声も交え、研修実施の背景や狙い、現場で生まれた気づきや変化について詳しくご紹介します。