「DX研修とは具体的に何をするのか?」「従来のIT研修とどう違うのか?」
本記事では、DX研修の定義から、実施する目的、得られる効果までをわかりやすく解説します。対象者別のプログラム例や研修の進め方についても説明します。
目次
そもそもDX研修とは何か
DX研修の定義
DX研修とは、企業が デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できる人材 を体系的に育成するための社内教育プログラムです。
従来の IT スキル習得講座にとどまらず、戦略立案から組織運営まで「ビジネス変革を実現する力」を身につける点が特徴です。
従来のIT研修との違い
| 従来の IT 研修 | DX 研修 |
|---|---|
| システム/ツール操作の習得が中心 | ビジネスモデル変革・組織変革まで視野に入れる |
| 個々の担当者スキル向上が目的 | 部門横断で「共通言語」と「推進体制」を形成 |
| 受講後は現場任せになりがち | 研修内でプロジェクト案を作り実装フェーズへ接続 |
DX研修の「目的」と「効果」
なぜ今、DX研修が不可欠なのか(社会的背景)
DX研修の必要性が高まる背景には、多くの企業が直面している以下のような「3つの大きな変化」があります。
-
1. 市場と顧客の期待値の変化(攻めのDX)
デジタル技術の普及により、顧客が情報を得る手段や価値を感じるポイントが根本的に変わりました。単にモノやサービスを買うだけでなく、その前後にある「体験(CX=顧客体験)」全体を重視するようになっています。従来のやり方だけではこの期待に応えられず、データを活用した新しい顧客体験やサービスモデルの創出(=攻めのDX)が不可欠です。 -
2. ビジネス競争の激化(生き残り)
デジタル技術を活用した新興企業(スタートアップ)や、異業種からの参入が相次ぎ、業界の垣根が崩れています。既存のビジネスモデルが急速に陳腐化するリスクに対応し、競争力を維持・強化するために変革が急務となっています。 -
3. 社内の「2025年の崖」と人材不足(守りのDX)
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」が目前に迫っています。これは、長年使ってきた古い基幹システム(レガシーシステム)が足かせとなり、データ活用や業務変革が進まない問題です。さらに、少子高齢化による労働力不足や、システムの詳細を知るIT人材の不足も深刻化しており、デジタル技術による生産性向上が待ったなしの状態です。
以上の背景から、単なるITツール導入ではなく「顧客価値の再定義」「業務・組織・人材の再設計」まで踏み込むDXを推進できる人材育成=DX研修が、企業の持続的競争力の前提になっています。
DX研修の4つの主要な目的
DXは、デジタル(手段)を活かし、デジタル時代(背景)に適応するために事業と組織を変革することです。研修の狙いは、用語やツール習得そのものではなく、組織が自走して変革に踏み出し続けるための土壌・人・方針を整えることにあります。以下の4点を重視します。
1. 共通認識と“変革の土壌”づくり(全社員)
部門や職種ごとにばらつきがちな「DXの意味」を一本化し、「なぜ今、何を変えるのか」を自社の文脈で腹落ちさせます。手段先行を避け、まずは顧客・市場・競争の変化を起点に、変革の必然性を共有し、全社で同じ地図を持つ状態をつくります。
2. 経営と実務をつなぐ“橋渡し”(経営層)
現場の企画が孤立しないよう、経営の意思と前提を合わせ込みます。研修内でDXビジョン(DX戦略)骨子を作成し、「誰に、どんな価値を、どのように提供するか」という戦略・組織変革の方針を明確化し、変革の拠り所をつくります。
3. 新規価値創造(攻めのDX)を牽引するリーダー育成
“学んでからやる”ではなく、“企画しながら学ぶ”進め方で、推進の中核となる人材を育てます。実在の顧客課題を「誰の、どんなジョブの、どんな課題か」で整理し、カスタマージャーニーで体験を分析。リアル×デジタルの接点で提供価値を設計し、DX企画を仕上げます。
注釈:ジョブ=顧客が片づけたい用事や達成したいこと/カスタマージャーニー=顧客が目的達成に至るまでの体験の一連の流れ。
4. 現場の業務課題解決(守りのDX)と生産性向上
全社的な変革と同時に、現場レベルでの課題解決も進めます。日々の業務プロセスに潜む「ムダ・ムラ・ムリ」を特定し、生成AIなどのデジタルツールを活用して具体的に解決・改善するスキルを身につけ、組織全体の生産性を向上させます。
DX研修で得られる4つの具体的な効果
DX研修を導入することで、組織や人材には以下のような具体的な変化(効果)が現れます。
1. DX推進の「共通言語」ができ、抵抗感が減る
ばらつきがちな「DXの意味」「なぜ・何を変えるか」の前提が揃い、部門間の擦り合わせが短縮されます。用語・判断基準・優先順位の共通化により、会議の往復や「ウチは関係ない」といった現場の抵抗感が減り、変革の土壌が整います。
2. 経営の意思決定が速く、投資の迷いが減る
研修で作るDXビジョン(DX戦略)骨子を拠り所に、Who(誰に)・What(どんな価値を)・How(どう届けるか)が言語化されます。これに沿って案件の優先順位付けや“やる/やらない”の判断が揃うため、経営の迷いが減り、現場の企画が前に進みます。
3. 顧客起点のDX企画が“形になる”
“学んでからやる”ではなく“企画しながら学ぶ”進め方で、現実のテーマがプレゼン可能な案に仕上がります。顧客課題を「誰の、どんなジョブの、どんな課題か」で整理し、カスタマージャーニーで体験を可視化。社内提案に耐えるストーリーへまとめます。
4. AI等を活用した「業務改善」が現場で進む
現場の担当者が「問題定義→課題特定→解決策立案」のプロセスを身につけ、生成AIなどを「便利な道具」として使いこなせるようになります。これにより、日々の業務効率が改善され、組織全体の生産性が底上げされます。
DX研修の種類と対象者
DX推進のステップは大きく変革の土壌づくりから実行まで4ステップあります。各ステップに対応した研修体系(種類)を示します。

1. 全社員向け:DX基礎研修(変革の土壌づくり)
DXとは何か、デジタル時代の企業・ビジネス変革の基本を理解し、手段先行を避ける共通認識を形成します。
プログラム:DX基礎研修【初学者・ステップアップ前のDX基礎固めに最適】
2. 経営層向け:DXビジョン・戦略策定研修
全社/事業別のDXビジョン骨子を作成し、Who(誰に)・What(どんな価値を)・How(どう届けるか)と組織変革の方向性を明確化します。
プログラム:経営層向け DX 研修【役員・幹部のためのDXビジョン・戦略策定ワークショップ】
3. DXリーダー向け:DX企画・価値創造研修(攻めのDX)
実在の顧客課題を「誰の、どんなジョブの、どんな課題か」で整理し、カスタマージャーニーで体験を分析。リアル×デジタルの接点で提供価値を設計し、役員提案まで仕上げます。
プログラム:DXリーダー研修【顧客起点のDX新規事業企画を役員提案】
4. 現場向け:業務改善・問題解決研修(守りのDX)
生成AIを活用して日々の業務課題を定義・分解・改善します。業務手順やナレッジを更新・標準化し、“守りのDX”を前進させます。
プログラム:DX時代の問題解決研修【生成AI活用でビジネス課題を解決する技術】
5. 現場実装・フォローアップ
合意した次の一手を短期アクションに落とし、壁打ち機会(講師との相談や議論の機会)を設定して進捗を支援します。
なお、上記は最も単純化したステップです。企業変革では特定領域に焦点を絞って成功例をつくり(スモールサクセス=小さな成功体験)、徐々に横展開を行うパターンも多いです。
その場合は、実行プラン策定と実行後に改めて、上位方針明確化を行います。
DX研修導入のプロセス(進め方)
- 研修前事前調整:
事務局と研修目的・対象・日程・体制・情報取り扱いをすり合わせ、期待するアウトプットを明確化します。必要に応じて秘密保持契約(NDA)も確認します。 - 設計(現状把握とテーマ整理):
企業情報・課題感・企業理念・受講者層を基に設計をカスタマイズします。業界に沿った事例レクチャーや演習テーマを用意します。 - 研修の実施:
狙いに応じて該当プログラム(DX基礎研修/経営層向けDX研修/DXリーダー研修/問題解決研修)を実施します。毎回ワークを組み込み、実務テーマの検討・企画づくり・骨子づくりへつなげます。 - 振り返り・次の一手:
研修後は必ず受講者にアンケートを実施します。アンケート回収後、事務局と講師にて研修の振り返りを行います。
アンケート内容は、受講者の満足度、研修の浸透状況などを収集、分析します。加えて、この機会に研修を通じてわかった各受講者のDX推進の課題ややるべきと思っていることなどを収集し、次の具体的な行動計画に繋げることが重要です。
よくある質問(FAQ)
1. ITが得意ではないメンバーも参加しても大丈夫ですか?
大丈夫です。私たちのDX研修は「デジタルは手段、変革が目的」を前提に、DXとは何か/デジタル時代の企業・ビジネス変革の基本を理解し、実務で使える考え方に落とし込む内容です。技術の操作訓練が中心ではありません。基礎から共通理解を作ったうえで進めます。
2. 実施形式は対面・オンラインに対応していますか?
対応します。対面またはオンラインのいずれかで実施します。複数回の研修では、1日目は対面/2日目はオンラインのように、回ごとに形式を変える運用は可能です。
- DX基礎研修:対面/オンライン(対面推奨)
- 経営層向けDX研修:対面/オンライン(集合型の対面研修を推奨)
- DXリーダー研修:対面/オンライン(対面推奨・毎回ワークを実施)
- DX時代の問題解決研修:対面/オンライン(対面推奨)
3. 期間やスケジュールの目安は?
- DX基礎研修:1回、半日〜1日集中
- 経営層向けDX研修:2〜3回(各回 半日〜1日)/準備 約1か月(設計・メンバー調整・目的設定)/実施期間の目安 1〜3か月
- DXリーダー研修:4〜6回(各回 半日〜1日)/準備 約1か月(設計・メンバー調整・テーマ設定)/実施期間の目安 3〜6か月
- DX時代の問題解決研修:1回~2回(各回 半日〜1日)
4. 推奨の人数構成は?
最大30名程度を目安に設計します。4〜6名でグループを組むと、議論の密度とアウトプットの質が安定します。規模が大きい場合は日程分割や複数クラスをご提案します。
5. どの程度カスタマイズできますか?
カスタマイズ可能です。
事前に企業情報・課題感・企業理念・受講者層などを伺い、進め方や用語、事例、演習テーマを業界・事業に合わせて調整します。
お客様業界に合わせた事例レクチャーなども行います。
6. 実務のテーマを持ち込めますか?
基本的に持ち込みを推奨します。DXコア研修は、実テーマでのワークショップを基本としています。研修ごとの扱いは次のとおりです。
- 経営層向けDX研修:実際の企業テーマでDXビジョン骨子(全社/事業別)や組織変革方針を検討します。
- DXリーダー研修:実在の顧客課題を「誰の、どんなジョブの、どんな課題か」で整理し、カスタマージャーニーで体験を分析。リアル×デジタルの接点で提供価値を設計し、自社の実案件に落とし込む企画を作ります。
- DX基礎研修:短い演習で“考え方”を体験します。
7. どのプログラムを選べばよいですか?
目的に合わせてお選びください。共通認識づくり=「DX基礎研修」、価値創造の企画づくり=「DXリーダー研修(価値創造型DX企画)」、ビジョン・方針の明確化=「経営層向けDX研修(DXビジョン骨子)」、既存事業の改善=「DX時代の問題解決研修」が目安です。
詳細は各プログラムページをご参照ください。
- DX基礎研修【初学者・ステップアップ前のDX基礎固めに最適】
- DXリーダー研修【顧客起点のDX新規事業企画を役員提案】
- 経営層向けDX研修【役員・幹部のためのDXビジョン・戦略策定ワークショップ】
- DX時代の問題解決研修【生成AI活用でビジネス課題を解決する技術】
8. 研修費用の目安は?見積もりの考え方は?
内容・時間・回数・参加人数・開催形態(対面/オンライン)などで変動します。目的・対象・テーマが固まり次第、最適な構成で御見積します。
DX研修導入事例を見る
【株式会社ADEKA様】DX基礎研修事例 ―現場主導で進める人財育成と変革の第一歩

グローバルに事業を展開し、化学品・食品・ライフサイエンス分野で人々の暮らしを豊かにしてきた株式会社ADEKA。
同社は2024年度、中期経営計画「ADX2026」の中核施策としてDX推進を掲げ、全社的な変革を加速させています。
その起点となったのが、デジタルトランスフォーメーション研究所による「DX基礎研修」です。
研修を主催したDXプロジェクトメンバーの声も交え、研修実施の背景や狙い、現場で生まれた気づきや変化について詳しくご紹介します。
【株式会社ユニマットリック様】DX基礎研修事例 ―部分最適から全体最適で挑む業界DX

ITソリューションでエクステリア業界を牽引する、株式会社ユニマットリック。
同社は今、長年の課題であった社内のシステム・組織の分断を乗り越え、さらにはエクステリア業界全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導するという壮大なビジョンを掲げ、変革の道を突き進んでいます。
その大きな原動力となったのが、代表取締役社長 小松正幸氏の強いリーダーシップと、変革の初期段階で行われたデジタルトランスフォーメーション研究所の「DX基礎研修」でした。
研修がどのようにして組織に火をつけ、具体的な行動へと繋がったのか。小松社長へのインタビューを基に、その軌跡を追います。
【京王電鉄様】「DXビジョン」策定プロジェクト支援事例
100年以上の歴史を持ち、運輸、流通、不動産など、人々の生活に密着した事業を展開する京王電鉄株式会社。同社が次なる成長に向けてDXを推進する中で、その羅針盤となる「DXビジョン」の策定プロジェクトが立ち上がりました。 しかし、歴史ある大企業ならではの縦割り組織の壁や、DXに対する共通認識の欠如といった課題が立ちはだかります。
本記事では、プロジェクトリーダーを務められた鉄道事業本部 計画管理部の山田敦哉様に、外部アドバイザーとして伴走した株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所 代表取締役の荒瀬光宏を交えてインタビュー。あえて困難な「全員参加型」のビジョン策定の道を選び、多くの部門を巻き込みながら、最終的に全社的な共感を呼ぶ「事業ビジョン」をいかにして作り上げていったのか、その軌跡を伺いました。
DX研修プログラム一覧
DX基礎研修【入門/リテラシー標準対応で全社員のDX共通言語を作る】
「DX基礎研修」は、DXの定義、背景、価値創造の型を体系的に学び“DXの当たり前”を固める1日集中デジタルトランスフォーメーション入門プログラム です。
初学者から管理職まで、全社で通じる共通言語を短時間で整えます。
企業のデジタルトランスフォーメーション実行確度を高めるため、変革の土壌をつくる起点に最適です。
経営層向けDX研修【役員・幹部のためのDXビジョン・戦略策定ワークショップ】
「経営層向けDX研修」では、外部環境やテクノロジートレンド、自社の収益構造を踏まえ、DXの基本方針(ビジョン)を短期に合意形成するワークショップです。経営自らが方向性を明確にすることで、全社変革の拠り所を作ります。
経営層(役員、経営幹部))が「DXとは何か」「なぜ今DXが求められるのか」「自社を取り巻く環境変化は何か」を集合形式で学びます。
そのうえで、自社のDXビジョン骨子(デジタルトランスフォーメーションの基本方針)を策定、経営層で合意形成を計ります。
DXリーダー研修【顧客起点のDX新規事業企画を役員提案】
「DXリーダー研修」は、実テーマを使って 価値創造型のDX企画を立案する研修です。
ワークショップ形式の高い実践性が特長で、ケーススタディやサンプルではなく自社にとって本当に価値ある新規事業ビジネスプランを策定。最終日には役員や社長の前でプレゼンテーションを行う機会を設けます。
また、オプションでメンタリング支援も用意。講師のグループ単位で個別アドバイスによりビジネスプランの精度を高めます。
DX時代の問題解決研修【生成AI活用でビジネス課題を解決する技術】
「DX時代の問題解決研修」は、問題定義→課題特定→解決策立案の3ステップを、生成AIの支援を前提に高速で回す実務型プログラムです。現場の情報とフレームワークを組み合わせ、論点の発見から具体策の設計までを繰り返し精緻化します。
MBAのフレームとプロンプト設計・評価・反復を統合し、“仮説→検証”のサイクルを短縮。日々の業務で使えるAI×問題解決の型を身につけます。
DX研修のお問い合わせ
DX研修のご相談は、こちらの専用フォームよりお気軽にご連絡ください。
依頼内容が固まっていない段階のご相談も歓迎です。「何から始めるべきか」「どの層から着手するべきか」「社内の温度差をどう埋めるか」など、現状の整理から壁打ち相手として伴走します。ヒアリング後、最適な進め方・対象・期間のたたき台をご提案します。