ビジネスにおいて「問題解決」は必須のスキルですが、そもそも「何を解決すべきか」を正しく設定できているでしょうか?
すべての仕事は「ビジネス上の問題を解決すること」の連続であり、経営層から現場まで、全社員に求められる基礎能力です。しかし、実務の現場では、表面的な事象に対処するだけで根本的な解決に至らないケースが少なくありません。
本記事では、問題解決の起点となる「問題定義」とは何かを初心者にもわかりやすく簡単に解説します。王道の「AsIs-ToBe」分析の具体的な数値事例から、DX時代に不可欠な「ジョブ理論」の活用、そして実務で陥りがちな失敗パターンまで、具体例を交えて詳しく紹介します。生成AIと対話しながら「真に解くべき問い」を見つけ出し、解決のスピードを劇的に高めるプロセスを身につけましょう。
なお、本格的なDX(デジタルトランスフォーメーション)時代において、これらの問題解決知識だけでなく実践的なスキルまで最短で身につけたい方には、当研究所のDX研修サービスがおすすめです。
目次
はじめに:問題解決の起点となる「問題定義」とは?
ビジネスにおける「問題定義(What)」の重要性
ビジネスの基本にして最重要スキルと言えるのが「問題解決」です。問題解決は成果に差が出るスキルであり、良い「型」を身につけることでその成果には大きな差が生まれます。
その問題解決のプロセスの起点となるのが「問題定義」です。問題定義とは、組織として「そもそも解くべき問題は何か?(What)」を明確に規定する作業を指します。
問題解決プロセス(What→Where→How)における立ち立ち位置
問題解決には効果的なプロセスの“型”があります。大きく分けると、「問題定義(What)」「問題特定(Where)」「解決策立案(How)」「実行(Actions)」の4段階です。
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良い問題解決のポイントは、いきなり手段・実行にいかないことが重要であり、Whatが不在のまま手段に走ると、目的を見失い失敗に終わります。
生成AI時代に人間が担うべき核心スキル
現代のDX・AI時代において、問題定義の重要性はさらに高まっています。なぜなら、AIは膨大な回答を出せますが、自ら「問い」を立てることはできないからです。「何を解くべきか(What)」という問いを、ビジネスの文脈に合わせて設定する力こそが、人間に求められる核心スキルとなります。
【王道の型】AsIs-ToBe分析で「理想と現実のギャップ」を捉える
問題定義の最も基本的かつ強力な型が、AsIs-ToBe(現状・あるべき姿)分析です。ビジネスにおける「問題」とは、あるべき姿(理想)と現状(現実)の「差(ギャップ)」そのものを指します。

ビジネスには必ず目標やゴールが存在します。そのため、現在の状況と目標との間に乖離があるならば、それはすべて「問題」として定義することが可能です。「何か特別な困りごと」を探すのではなく、目標への道程におけるギャップを正しく捉えることが、プロの問題定義の第一歩です。
誰が読んでも齟齬がない「問題定義」3つの鉄則
曖昧な定義を避け、組織の共通言語とするためには、以下の3つのルールを徹底しましょう。
- 詳細に言語化する:「誰が、いつ、どこで、どんな状態か」を可能な限り詳しく書き出します。
- 数字や固有名詞を使う:主観を排除し、誰が読んでも全く同じ問題をイメージできる状態が理想です。
- 原因や手段は考えない:この時点では「なぜそうなっているか(原因)」や「どうすべきか(手段)」は混ぜず、あくまで「起きている事実(ギャップ)」の定義に集中します。
AsIs-ToBeによる問題定義の具体例
抽象的な問題を、AsIs-ToBeを使って「解ける問題」に変換した事例を紹介します。

事例1:営業部門の売上目標
「売上が足りない」という曖昧な状態を、「今期目標1億円(ToBe)」に対し「現在5,000万円(AsIs)」と置くことで、「残り3か月で5,000万円の追加売上獲得が必要(GAP)」という具体的な問題が定義されます。
事例2:工場の品質改善
「品質が悪い」という主観的な評価を、「基準誤差0.1%以内(ToBe)」に対し「現在1%(AsIs)」と置くことで、「加工精度を10倍(1%→0.1%)に高める必要がある(GAP)」と定義。目指すべき改善のインパクトが明確になります。
【DX時代の型】ジョブ理論で「本質的な目的」を捉える
既存業務の改善ではなく、新たな価値創造やイノベーションを目指す場合に有効なのが「ジョブ理論」です。これは顧客が「何を買ったか」ではなく、「特定の状況で、どのような進歩を遂げたくてその製品を雇用(採用)したか」を深く理解するための枠組みです。
ジョブとは、「特定の状況における」+「顧客が達成したい進歩」と定義されます。
有名な「ミルクセーキの逸話」では、朝の通勤客が「長距離の車通勤」という「状況」で、「退屈な時間を紛らわせ、午前中にお腹が空かないようにしたい」という「ジョブ」のためにミルクセーキを買っていたことがわかりました。この定義により、競合は「他の飲み物」ではなく「バナナやドーナツ」であるという真の市場構造が見えてきたのです。
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例えば、「ランチ選び」を例に考えてみましょう。「平日のオフィス街で働く田中さん」が「13時から来客がある」という状況にいる場合、彼のジョブは「単に空腹を満たす」ことではなく、「失敗しない店を選び、限られた休憩時間で効率よくお腹を満たしたい」となります。ここから「おいしくてすぐ入れる店がどこにあるかわからない」という解決すべき真の課題が導き出されます。
ジョブ理論活用の前提:まず「主語(誰のジョブか)」を明確にする
特に生成AIプロンプトを活用してジョブ理論から問題定義を行う際の重要なベストプラクティスが、「主語」を明確に規定することです。誰の目線に立つかを最初に固定することが、ブレない定義の土台となります。
- 顧客課題仮説:主語は「顧客」。新規事業創出などが目的です。
- 社内業務課題仮説:主語は「自社社員」。業務効率化や生産性向上、インフラ刷新などが目的です。自社業務の場合は、顧客を自社社員などに置き換えてジョブを考えます。
実務で陥りがちな「問題定義」の3つの失敗
失敗① 問題定義が「曖昧」な状態で進めている
最も多いのが、言語化が不十分なまま議論を始めるケースです。「生産性を上げよう」といったスローガンレベルでは、メンバーごとにイメージする「あるべき姿」が異なり、足並みが揃いません。前述の3つの鉄則に立ち返り、数字や固有名詞を使って「誰が読んでも同じ定義」にまで落とし込むことが不可欠です。
失敗② いきなり「How(手段)」から議論を始める手段の目的化
「最新のAIを導入しよう」「DX推進チームを作ろう」など、解決策(手段)ありきで動いてしまうパターンです。本来、手段は定義された「問題(ギャップ)」を埋めるための道具に過ぎません。What(何を解くか)が不在のままHowに走ると、多額の投資をしても成果が出ない事態に陥ります。
失敗③ 定義の時点で「原因」や「手段」を混ぜてしまう
「○○システムがないことが問題だ(手段の不在)」「スキル不足が問題だ(原因の推測)」といった定義は、思考を硬直化させ、視野を狭めてしまいます。システムがないことは「解決策」の話であり、スキル不足は「原因分析(Where/Why)」の話です。これらを混ぜず、まずは「あるべき姿と現状の差」という純粋な事実のみを抽出しましょう。
いきなり正解は出ない。実践的な「問題の再定義」プロセス
問題定義は、一度の作業で完璧な正解が出るものではありません。実務においては、まず「仮設定」として言語化し、それを叩き台にして周囲と対話を重ねながらブラッシュアップしていく「再定義(リフレーミング)」のプロセスが極めて重要です。
ステップ1:まずは「仮設定」で泥臭く言語化してみる
最初から完璧な文章を目指す必要はありません。まずは現状把握している範囲で、「誰が・どんな状況で・何に困っているか(ギャップ)」を仮設定として言葉に落とし込みます。一度文字にして可視化することで、自分自身の思考の解像度が上がり、周囲に見せる「叩き台」が完成します。
ステップ2:「手頃で解けるとうれしい問題」への再定義
仮設定した定義をベースに、周囲のメンバーと議論したり、生成AIを壁打ち相手にしたりして洗練させていきます。壮大すぎて手が付けられない問題は、自分たちが扱いやすく、解決した際のメリットが明確な「手頃で解けるとうれしい問題」へとレベルを調整し、表現の解像度を上げていきます。
ステップ3:組織内で「共通言語」として合意形成する
再定義の最終目的は、チーム全員の認識を完璧に一致させることです。一度書いた定義を元に、「本当にこれで現場と経営層の認識にズレがないか」を確かめ、他の組織の人でも理解できる平易な表現(共通言語)としてチーム内で合意形成をします。この丁寧なプロセスがあるからこそ、その後の解決スピードが劇的に向上します。
生成AIを活用して「問題定義」の質とスピードを劇的に高める
AIを壁打ち相手にプロセスを高速往復する
生成AIはAsIs-ToBeやジョブ理論といった経営理論を深く学習しています。人間が一人で悩むよりも、AIと対話を繰り返すことで、視点の漏れを防ぎ、精度の高い再定義を数分で完了させることができます。
アイデアの量が質を高める(多産多死)
良質な問いを見つけるには、大量の仮説を出す必要があります。生成AIを活用すれば、短時間で100通りの「問いの切り口」を生成することも可能です。その中から最も本質を突いたものを人間が選ぶことで、効率よく「良質な問題」への集中が可能になります。
まとめ:自組織の問題解決力を高めるために
問題解決において「問題定義(What)」はすべての土台です。王道のAsIs-ToBeやジョブ理論を活用し、「理想と現実のギャップ」を具体的かつ客観的に言語化する習慣をつけましょう。
問題定義を終えた後の具体的な進め方については、次のステップとして問題解決のプロセスとフレームワークの記事もぜひ参考にしてください。
さらに、これからのDX時代には、生成AIをパートナーとしてプロセスを高速化するスキルが不可欠です。デジタルトランスフォーメーション研究所では、生成AIを使って問題解決力を劇的に高めるための「生成AI時代の問題解決研修」をご提供しています。AIと対話しながら「真に解くべき問い」を見つけ出す実践的なスキルを、ぜひ組織にインストールしてください。
また、ほかのDX向けフレームワークも学びたい場合は、DXフレームワーク解説ガイド|全体像と実践手法もあわせてご覧ください。

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
代表取締役/DXエバンジェリスト
DX推進・企業変革の専門家。豊富な現場経験と実践知をもとにコンサルティング、企業研修、講演活動を行う。
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