自社を進化させる「DX思考」とは?Fole連載全12回まとめ

株式会社みずほ銀行発行の月刊誌「Fole/フォーレ」にて、2025年7月号から2026年6月号までの12か月にわたり、弊社代表・荒瀬光宏による連載記事「自社を進化させるDX思考」を執筆いたしました。

本誌は、みずほ銀行のお取引先である企業の経営層の読者が多く、DXについて改めて学ぶきっかけとして大好評をいただき、当初6か月の予定から12か月に延長しての連載となりました。本記事では、全12回の各号の要約と、連載を終えての著者コメントをまとめてご紹介します。

※MIZUHO Membership One(MMOne)会員の方は、ぜひ本誌(PDF版/バックナンバー)もあわせてご覧ください。

なお、本連載で解説しているような変革の理論を、最短距離で実戦スキルへ昇華させたい方には、弊社のDX研修サービスがおすすめです。

みずほ銀行の月刊誌「Fole」
Fole 2025年7月号(提供:株式会社みずほ銀行)

「自社を進化させるDX思考」全12回の軌跡

Vol.1「新たな競争原理のマーケットを、変革で勝ち抜け!」(2025年7月号)

第4次産業革命下における「競争原理」の根本的変化

【要約】
企業におけるDXは、単なるデジタル技術の導入ではなく、環境変化を前提とした組織価値と競争力を高める「変革」です。IoTやAI、ビッグデータが牽引する第4次産業革命下では、リアル空間を含むあらゆる場所でデータの取得と分析が可能になり、従来とは比較にならないスピードでPDCAサイクルを回すことが求められます。

ここで鍵となるのが、新たな競争原理である「顧客エンゲージメント」です。かつてのような「高品質な製品を多く作る」という価値観から脱却し、顧客の真の課題やニーズを深く理解した価値提供が不可欠です。例えば、建機メーカーのコマツは「高性能な機械の提供」という部分最適から、「工期を計画通りに完了させる」という顧客視点の全体最適へとシフトし、関係性の深化に成功しています。

コマツ社のスマートコンストラクション
顧客視点の全体最適を実現したコマツ「スマートコンストラクション」の概念図

しかし、変革には「変わらないことの安心感」という社内の抵抗が必ず伴います。DXの本質とは、そうした壁を乗り越え、変化や顧客ニーズに迅速に対応できる「アジャイル型組織」へと自社を進化させることに他なりません。

【荒瀬の視点・裏話】
日本においては、残念ながら、DXをデジタル化と同義で捉えている経営層があまりにも多いのが現状です。連載初回として、経営層が真剣に向き合わなければならない経営上の重要テーマがDXであることを知っていただき、学ぶ姿勢を持っていただくために、DXが必要な背景について最初に触れさせていただきました。本文でも触れた「全体最適」による顧客エンゲージメントの獲得こそが、経営の進化の第一歩となります。

Vol.2「現場が自ら考え、動く。可視化が導く『自律型組織』」(2025年8月号)

経験や勘から脱却し、データで現場を動かす「自律型組織」へ

【要約】
環境や顧客ニーズの変化に俊敏に対応できる「アジャイル型組織」を目指すには、従来の経験・勘・度胸に頼った判断から脱却し、データに基づく意思決定(データドリブン)の仕組みを導入することが不可欠です。組織全体のKGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を定義してルールを標準化することで、経営層は高度な意思決定に集中し、現場は自律的な改善を進めることができるようになります。

ゑびやのDX事例(企業概要と経営課題)
ゑびやが抱えていた経営課題とDXの起点

データドリブン経営の好例として、三重県伊勢市にある約50人規模の老舗食堂「ゑびや」の取り組みが挙げられます。同店は団体客への依存から生じる機会損失や廃棄ロスを課題とし、ターゲットを一般客へシフトするという決断を下しました。来店者数や天候などのデータに基づく高精度な需要予測を取り入れ、仕込みや人員配置を最適化することで経営指標を大幅に改善しています。

ゑびやのDX事例(解決策と成果)
データドリブン経営による解決策と飛躍的な成果

さらに、iPadを活用して回転率や客単価といったKPIを現場に可視化し、「この数値を最大化することが皆さんの仕事です」と明確に伝えたことで、従業員が自ら考え、能動的に動く(例:行列ができたら先に注文を伺う等)組織へと進化しました。経営のテーマを数値化し、現場と経営層が共通認識を持って前進することこそが、DX推進の第一歩となります。

【荒瀬の視点・裏話】
DXを進めても、経営やマネジメントの現場には直接関係ないことと考えている組織は少なくありません。しかし、伊勢市の「ゑびや」の事例からもわかるように、DXは多くのデータを獲得できるようになるため、現場の行動はもちろん、経営やマネジメントそのものが変わることが最大の特徴です。リアルタイムなデータを使って、自社でどのような経営ができればうれしいのかを、ぜひ構想しはじめましょう。

Vol.3「『デザイン思考』で顧客の内なる課題を見抜け!」(2025年9月号)

顧客の「ジョブ」を起点に、体験全体を最適化するプロセス

【要約】
DX時代において企業が提供すべき価値は、単なる製品の提供から「顧客が本当に実現したいこと(ジョブ)」へと変化しています。この顧客体験全体を最適化するための手法が「デザイン思考」です。顧客への観察と共感から真の課題を見出し、多様なアイデアの創出、プロトタイプ作成、テストを繰り返す5つのステップで構成されます。ここで重要なのは、社内の意思決定層の意見よりも「実際の顧客の声」を優先することと、「早く失敗し、小さな改善ループを柔軟に回す」ことです。

この顧客体験の設計に極めて有効なのが「カスタマージャーニーマップ」です。顧客の行動や感情を時系列で分解し、現状とあるべき姿のギャップ(不満・課題)を可視化します。例えばアパレル店舗での「自分のサイズが欠品している」という不満に対し、「ECアプリでの全在庫検索(デジタル)」と「EC購入を促す接客(リアル)」の両面から打ち手を検討します。

このように課題解決の打ち手をデジタルとリアルに分類することで、必要なシステムやデータ要件が明確になり、システム開発担当者や外部ベンダーとの連携も円滑になります。顧客のジョブに応じた継続的な接点創出こそが、最適な顧客体験と価値の最大化に直結するのです。

【荒瀬の視点・裏話】
「業界の常識はこっち」などという過去の常識にとらわれず、価値を最大化するためには、本稿で紹介したカスタマージャーニーマップを使って顧客の行動を詳細に分析することが有効です。机上の空論ではなく、「なぜこうなっているのか?」を実際の顧客体験から具体的に考える行動が、進化し続ける組織には重要です。

Vol.4「業界の提供価値に着目し、『顧客接点』を設計せよ」(2025年10月号)

「顧客体験」を起点に、デジタルとリアルの接点を全体最適化する

【要約】
企業のDX推進において競争優位を左右するのは、顧客にとっての「新たな価値」をどう設計するかです。その具体的なアクションとして、やみくもにスマホやウェブといったチャネルを増やすのではなく、購買体験や幸福感、自己実現といった「顧客の体験」を起点に顧客接点を設計し、行動を全体最適化することが求められます。

例えばナイキは、単なる「靴を提供する事業」から「顧客の自己実現や幸福感を支援するパートナー」へと提供価値を再定義しました。デバイスから取得した心拍データに基づくアドバイスやSNS連携といった「デジタル接点」と、商品を通じた「リアル接点」を組み合わせることで、顧客の「伴走者」としての強固なブランド価値を築き上げています。

自社の新たなサービスを構築する際には「価値提供フレームワーク」が有効です。顧客が実現したいことを見定め、これまで業界や顧客が「仕方ない」と諦めていた潜在的・顕在的な課題を洗い出し、デジタルとリアルの両面から解決策となる仕組みを整理します。さらに、事前にプロジェクトの失敗要素を想定して対策を練る「プレモーテム」手法を用いることで、組織内に共通認識が生まれ、成功へ向けた強力な土台となります。

【荒瀬の視点・裏話】
このように顧客体験を起点に考えることは、B2CだけでなくB2B企業においても非常に重要です。顧客接点はありふれた情報共有に見えるかもしれませんが、本稿のフレームワークを用いて業界全体の課題を分析し、デジタルとリアルの連携が精緻にできるようになることで、顧客の活動をさらに深く理解し、顧客の戦略にしっかりと寄り添った提案が可能となります。

Vol.5「『打ち手フレームワーク』で最適なアクションを考えよ!」(2025年11月号)

戦略課題の可視化と、自律的な変革を促す「ビジョン」の策定

【要約】
自社のDXにおける戦略課題とアクションを整理するには、阻害要因となる「外部環境(政治・経済・社会・技術など)」と「業界内環境(顧客・関係者など)」を軸とした「打ち手フレームワーク」による可視化が有効です。例えば動画配信サービスの事例では、「高速インターネットの普及」と「著作権保護の懸念」をX軸・Y軸に設定して市場を4象限に分け、各局面で取り組むべき最優先アクションを明確にします。場当たり的な対応を避け、変化を先読みして組織として備えるための強力なツールとなります。

そして、このフレームワークを活用した変革の基本設計として欠かせないのが「ビジョンの策定」です。何のためにDXを行うのかという目的や大方針を組織を挙げて明文化し、部門別の施策へと落とし込むことで、経営層と現場に共通認識が生まれ、現場の従業員が「組織のためにどう変わるべきか」を自主的に考え行動できるようになります。結果として、環境変化に強い「アジリティ(俊敏性)」と「データドリブン」な足腰を備えた組織へと進化するのです。

【荒瀬の視点・裏話】
DX時代の環境分析においては、市場が何を求めていて、業界が何を提供するべきかという中期的な業界の方向性を理解することが重要です。決して自社の製品を起点に考えすぎてはいけません。本稿で解説したフレームワークとビジョン策定を通じて方針を明文化し、組織全体の共通認識(ビジョン)を持つことが、現場の自主的な変革を促進します。

Vol.6「『組織行動の変容』で進化し続ける仕組みを整える」(2025年12月号)

6要素の同時刷新と、生成AIを活用した「暗黙知」の共有

【要約】
DXによって新たな顧客価値を設計できても、従来の「計画遵守・秩序重視」の組織体質のままでは成果は生まれません。市場ニーズに機敏に対応し、部門の壁を越えて動けるアジャイルな組織へと転換するには、「戦略」「マネジメント」「風土・文化」「データ」「人・スキル」「組織」という6つの要素を“同時”に見直す必要があります。組織は相互に制御し合っているため、一部だけを変えても古い均衡へ引き戻されてしまうからです。

組織行動を変容させる6つの要素
組織を進化させ続けるための「6要素の同時刷新」

組織行動を変革する上で最も効果的なのは、トップダウンとボトムアップを掛け合わせた「双方向アプローチ」です。ここで現場のボトムアップを強力に後押しするのが、生成AIの積極活用です。生成AIを用いることで、ベテラン社員本人すら上手く説明できなかった判断基準や「暗黙知」を言語化し、組織全体で検索・再利用可能な「共有知」へと変換でき、業務の属人性を排除することが可能になります。

この変革を推進するためには、経営層が「自社は何を実現したいのか」を明確に示し、組織全体の意識を揃えることが不可欠です。地球上の生命と同様に、企業も最強の者ではなく「変化に適応できた者」だけが生き残ります。自ら進化し続ける仕組みを社内に定着させることが、生存の必須条件となるのです。

【荒瀬の視点・裏話】
従来のマネジメント様式や前例、経験と勘にだけ頼った経営のままでは、組織はいずれ価値を失ってしまいます。本稿で触れたように、生成AIなども活用して個人の知見や経験を「データ」という形で残し、組織全体の予測や判断に活用することが重要です。変化を恐れず、常に進化し続ける仕組みづくりに今日から着手しましょう。

Vol.7「AIx分析で論点を洗い出す! 全社を巻き込む3ステップDX戦略」(2026年1月号)

生成AIを駆使し、「全体最適」を実現する3つの戦略ステップ

【要約】
DXとは、新たな価値創造に向けて事業や組織をつくり変える「全体最適」の取り組みであり、その実行は「現状分析」「DX戦略策定」「組織変革方針検討」の3ステップで進めます。

ステップ1の「現状分析」では、従来の枠組みにとらわれず、「技術」「市場・顧客」「自社」の3要素に絞った独自の「T2C分析」を推奨します。デジタル化で顧客ニーズ自体が変わる中、既存の競合ばかりを見ていては新しい価値は生まれないからです。分析で論点を洗い出す際や、強み・機会にフォーカスしたSWOT分析を行う際には、自社の特性を入力して網羅的かつスピーディーに論点を抽出できる「生成AI」の活用が極めて有効です。


DX戦略策定プロセス
DX戦略策定プロセス(画像クリックで詳細記事へ)

続くステップ2「DX戦略策定」で、誰に・どんな価値を・どのように届けるかをデジタルとリアルの両面から再定義し、打ち手マップを作成します。そしてステップ3「組織変革方針検討」において、業務プロセスやデータ活用、人事評価、マネジメント体制などを具体的にどう変えるかを言語化します。この組織や人を支える仕組みの再設計が曖昧なままだと、デジタル化そのものが目的化してしまうリスクがあるため注意が必要です。

【荒瀬の視点・裏話】
DX計画立案プロセス、特にT2C分析やSWOT分析の論点出しにおいて、効率や計画の品質など様々な面で生成AIを活用することが有効です。経営陣自らが生成AIに触れ、新しい時代においてどのように経営戦略を考えるかのフレームワークを社内で共有することは、マネジメント変革の第一歩として大きな価値があります。

Vol.8「脱・部分最適の罠! 事例に学ぶ『全体最適』の変革」(2026年2月号)

「自社の効率化」から「業界全体の価値再設計」への飛躍

【要約】
効率化を目的としたデジタル化が進む一方で、多くの企業が全社的な成果につながらない「部分最適の罠」に陥っています。DXによる最大の成果を得るには、部門をまたいだ「全体最適」の設計が欠かせません。

本号ではエクステリア業界向けCADソフト大手のユニマットリック社の事例を解説しています。同社は事業部ごとに分断されたシステムやアナログな業界慣行に危機感を抱き、「自社だけでなく、業界全体が効率的に働けるプラットフォームを構築する」という全体最適のビジョンを掲げました。成功の鍵となったのは、トップの強い意志と外部への好奇心(トップダウン)と、顧客のニーズに応えようとする現場の動き(ボトムアップ)の両輪を回し続けたことです。

DXの本質とは、単なる社内の効率化ではなく「価値提供の再設計」です。自社のDXを部分最適から全体最適へ引き上げるための視点として、以下の比較軸を意識することが重要です。

比較軸 部分最適 全体最適
視点(範囲) 部門・工程・機能(局所的) 企業全体・価値連鎖(全体的)
目的 既存プロセスの効率化、コスト削減 全社成果の最大化、顧客価値の創出
主なKPI 処理件数、工数、コスト、
担当範囲の売上
粗利総量、LTV、スループット、
納期遵守率
陥りやすい状態 組織のサイロ化、部門間の対立、
合成の誤謬
(設計が不十分な場合)現場の混乱、
短期的な非効率

【荒瀬の視点・裏話】
DXとは組織が価値を最大化するための「全体最適の旅路」です。業務の一部から始まり、自業界全体、顧客業界全体など幾多の全体最適のレイヤーが存在します。ユニマットリック社の事例を通じて、自社の目指す全体最適はどこかを考えるきっかけになれば幸いです。

Vol.9「DX時代を勝ち抜くための、『新規事業創出』プロセス」(2026年3月号)

AIを活用し、顧客起点でビジネスをデザインする3ステップ

【要約】
DXにおける新規事業創出(イノベーション)は、「顧客一人ひとり」という最小単位を起点とし、「事業機会探索」「顧客課題設定」「ビジネスプラン作成」の3ステップで進めます。


新規事業検討のフレームワーク活用の流れ(全体像)
新規事業検討のフレームワーク活用の流れ(画像クリックで詳細記事へ)

ステップ1の「事業機会探索」では、T2C分析やSWOT分析を用い、業界・技術トレンドのリサーチに生成AIを活用することで短期間で質の高い情報収集を行います。続くステップ2の「課題設定」では、顧客が成し遂げたい目的である「ジョブ」と、具体的な人物像である「ペルソナ」を定義します。その上でカスタマージャーニーマップを用いて顧客行動を細分化し、各フェーズに潜む障害や課題を深く掘り下げていきます。

最後のステップ3「ビジネスプラン作成」では、リーンキャンバスを用いて顧客セグメントや価値提案、収益モデルなどを1枚に落とし込み、全体を俯瞰しながらプランを詳細化・評価します。これらの全プロセスにおいて、生成AIを活用してアイデアを大量に出すことがポイントですが、市場の変化を踏まえて「進むべき方向(ゴール)を設定すること」は人間にしかできない重要な役割です。一人ひとりがイノベーションを生む力を備えることが、企業の生存条件となります。

【荒瀬の視点・裏話】
莫大な時間を使う割になかなか成果を出せなかった新規事業創出の分野は、AIの進化により革新的な変化を遂げつつあります。本稿で紹介したフレームワークとAI活用を組み合わせることで効率と質は飛躍的に高まります。「うちは新しい価値の創造なんて」と考えていた企業こそ、このプロセスを採用し、新たなビジネスチャンスを掴んでいただきたいです。

Vol.10「階層別ワークショップで、トップと現場の知見を融合せよ」(2026年4月号)

「腹落ち」と当事者意識を生む、カスケードダウン(段階的展開)の実践

【要約】
組織全体でDXの方向性を理解し、現場で実践していくには、DXビジョンを定定着させ、全社員に「腹落ち」してもらうことが不可欠です。そのためには、いきなり全社員を集めるのではなく、「カスケードダウン(段階的展開)」の手法を用いた「階層別ワークショップ」の開催が有効です。

まずは経営・マネジメント層が、環境認識や基本戦略を含むDXビジョンを策定し、「なぜやるのか」を言語化します。次にDX推進部門がビジョン実現のための課題を洗い出して仕分けし、さらに現場リーダー層が具体的なアクションへと落とし込んでいきます。

このプロセスで重要なのは、上から一方的に下ろすのではなく、現場の課題やアイデアを上層部へフィードバックする「トップダウンとボトムアップの融合」です。ワークショップの最大の成果物は、整った資料ではなく「納得した社員」そのものです。策定プロセスに自ら関わることで当事者意識が芽生え、DXのゴールである「自律的に動く組織」へと近づいていきます。

【荒瀬の視点・裏話】
弊社がもっとも得意としているワークショップを通じたビジョンの落とし込みについて解説させていただきました。DXの取り組みが「上から言われたことを仕方なくやる」状態に陥るのを防ぎ、組織全体の共通理解にするために避けて通れない、DX成功の重要な要素です。

Vol.11「現場と経営の溝を埋める! DX成功のカギはステップ設計にあり」(2026年5月号)

「小さな成功」を経営成果へ直結させる、水平・垂直の2軸設計

【要約】
DX推進において、現場での単なるスモールスタートでは経営成果につながりません。現場の「Quick Win(小さな成功)」をどう経営目標に結び付けるか、そのカギは「水平展開」と「垂直展開」の2軸によるステップ設計にあります。

組織が自律的に変わるためには、まず特定の業務でデータに基づいた新たなマネジメントを実践し、成功体験を積むことが不可欠です。しかし、ある現場での改善(例えば生産性向上)に留まっていては、経営目標の一部を満たしたに過ぎません。そのため、他部署を巻き込んで成功モデルを広げる「水平展開」と同時に、DXビジョンに沿ってより経営目標に近いKPIへとステップを積み上げる「垂直展開」が必要となります。

現場の改善と経営層の目標の間には、しばしば深い溝が存在します。現場の小さな変革がどう進化し、経営目標の実現につながるのか、その道筋(ステップのつながり)が最初から示されていなければ、経営層からの承認や投資は得られません。現場と経営が手を取り合い、データや組織能力がセットで向上していく階段を可視化することこそが、DXを成功に導く地図となるのです。

【荒瀬の視点・裏話】
こうしたステップ設計を着実に実行していく上で、デジタルスキルは重要ですが、それ以上に組織の変革期において普遍的に必要なのは「アナログスキル」です。アナログスキルが高くなければ、どれだけ素晴らしいデジタル戦略を描いたとしても、現場を巻き込み、組織全体で実行することはできません。

Vol.12「自身の価値を高めるため、2つのスキルを磨き続ける」(2026年6月号)

変化をリードする真のDX人材に必須の「疑問力」と「人間理解力」

【要約】
組織の変革をリードし、提供価値を高めることのできる「真のDX人材」には、主に2つの資質が求められます。1つ目は、周囲の事象に関心を持ち、足元の業務にも常に「なぜこの作業をしているのか?」と問いを立てる「構造的理解力(疑問力)」です。顧客が自社サービスを買う背景を構造的に把握することが重要であり、疑問を持ったら生成AIなどを活用してすぐに調べる習慣が、知識の定着と意欲を刺激します。

2つ目は、人間を理解し感情を動かす「アナログスキル」です。DXとは「組織が自律的に変化する活動」ですが、人は本能的に変化を嫌うため、変革の推進には必ず抵抗や対立が伴います。理屈だけでなく相手の感情に寄り添い、合意形成を図るリーダーシップが欠かせません。このスキルを磨くには、過去のリーダーの人間行動を学べる「歴史」の学習が極めて有効であり、経営者との共通言語にもなります。

デジタルスキルなどのテクノロジーそのものは、具体的な導入が決まってからでも学べます。歴史や人間理解といった時代に左右されない本質的な教養こそがDX時代の財産であり、変化に適応して生き残るための原動力となるのです。

【荒瀬の視点・裏話】
足元の業務に疑問を持ち、組織を挙げて実行するためには、人間の感情を動かす力が欠かせません。この2つのスキルを磨き続けることが、自身の価値を大きく高めます。進化論でも語られるように、最も強い者や賢い者ではなく、「変化できる者」だけが生き残るという本質を胸に、変革への第一歩を踏み出してください。

まとめ:変化を恐れず進化し続ける組織へ

経営層の皆さまを主な対象とする機関誌への連載ということで、いかに有益な内容にするかに絞って執筆いたしました。

日本の企業は長寿であり、伝統を持った企業が多いのは素晴らしいことですが、逆に言えば、変化に対応しづらい環境ができあがっているのも確かです。多くの企業が「変化する」ことへの恐れを解いて、新しい市場環境の中で組織の価値を最大化しつづけられるDNAを組織に定着されることが重要です。本連載が各社の変革の参考になれば幸いです。

弊社では、本連載やコラムを読んでいただいた方のご質問やご相談を無償で受け付けております。よろしければ、以下のリンクからいつでもご連絡ください。

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荒瀬光宏

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
代表取締役/DXエバンジェリスト
DX推進・企業変革の専門家。豊富な現場経験と実践知をもとにコンサルティング、企業研修、講演活動を行う。
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