大同生命保険株式会社が発行する中堅・中小企業経営者向けの月刊誌「one hour(ワン・アワー)」2026年5月号にて、弊社代表・荒瀬光宏の取材記事が掲載されました。
東洋経済新報社様に取材・編集をいただき、「DXの最終目標は企業変革――小さな成功体験を積み重ねて変わり続ける組織を目指せ」というテーマで、中小企業が置かれた現実的な環境に即したDXのあり方について大変分かりやすく整理していただいております。
本記事では、誌面でお伝えした「地に足のついたDXの進め方」のエッセンスを、著者としての所感や最新の補助金情報を交えて詳しく解説します。
なお、誌面の内容をさらに深掘りし、自社に合わせた実践的な変革スキルを身につけたい方には、当社のDX研修がおすすめです。

目次
中小企業が目指すべき「身の丈に合った」DXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質は、単にITツールを導入して省人化や効率化を図ることではありません。最終目標は、時代や激変する市場環境に合わせて「自律的に変わり続ける組織」へと企業変革することにあります。
しかし、人的資源や資金に余裕の少ない中小企業が、いきなり壮大なビジョンや大胆なビジネスモデルを構想しようとすると、難易度が高く途中で頓挫しがちです。
では、リソースの限られた中小企業は、どのようにDXの第一歩を踏み出せばよいのでしょうか。そのブレイクスルーとなるのが、大上段の計画よりも「身近な経営課題の解決」を最優先にするアプローチです。
大上段に構えず「目先の経営課題」から着手する
中小企業のDXにおいて、最初から大きなビジョンを掲げる必要はありません。「残業時間を半分にしたい」「この業務の属人化を解消したい」といった、切実な目先の経営課題をDXの目標にするアプローチをお勧めします。
「小さな成功体験」の積み重ねが変革を成功に導く
まずは業務の課題を列挙し、最も解決が容易そうなテーマからデジタルツールを適用していく「優先順位付け」が重要です。たとえば、営業担当者の残業が課題であれば、勤怠管理ソフトを導入して出先からの打刻を可能にするだけで、確実な成果(Quick Win)が出ます。
その時点でできることに愚直に取り組み、現場主導で「小さな成功体験」を積み重ねていく中で、自然と次のステップが見えてくるようになります。
中小企業のDXを成功に導く3つの進め方
中小企業のDXはトップダウンで推進するのが基本ですが、現場を置き去りにした計画は「絵に描いた餅」になってしまいます。成功のために押さえるべき3つの進め方を解説します。
1. トップダウンとボトムアップの融合
経営者が「会社がどの方向へ進み、社会にどんな価値を提供するのか」という方針(ビジョン)を示すトップダウンの働きかけは不可欠です。しかし同時に、現場主導のボトムアップによる初歩的なデジタル化から着手し、日々の業務改善を現場に定着させていく双方のアプローチの融合が変革の鍵となります。
2. デジタルスキル×人を動かす「アナログスキル」
DX戦略策定や業務プロセスの再設計にはデジタルスキルが欠かせません。しかし、それを現場に実施・定着させる際には、社内全体を巻き込んで人を動かす「アナログスキル(コミュニケーション力)」がそれ以上に求められます。現場の人々が取り組みに協力し、好意的に迎えられるような工夫や対話が不可欠です。
3. 現場が自律的に動ける明確な「KPI」を設定する
データに基づいた自律的な業務改善を現場に定着させるには、業務に適切なKPI(重要業績評価指標)を落とし込む必要があります。
この際、もしKPIが「粗利率」や「営業利益率」といった抽象的なものだと、現場のスタッフは何を改善すればよいか混乱してしまいます。たとえば飲食店であれば「テーブルの回転率を1日4回転に上げる」といった、現場の誰もが把握できる具体的な指標を設けることが大切です。指標が明確になれば、現場スタッフから「あらかじめ注文を取りに行く」「ランチタイムの相席を推奨する」といった自律的なアイデアが生まれるようになります。

コストを抑えてDXを加速させる「補助金」と「AI」の活用
限られた予算の中でDXを推進するためには、国の支援制度や最新のテクノロジーを賢く活用することが不可欠です。
2026年度より刷新「デジタル化・AI導入補助金」の概要
中小企業に人気の高かった「IT導入補助金」が、2026年度より「デジタル化・AI導入補助金」へと名称変更され、導入後の活用まで支援する制度へと進化しました。利用頻度の高い「通常枠」や、インボイス制度に対応した「インボイス枠」の概要は以下の通りです。
- 通常枠:業務プロセスを改善するソフトウェアやクラウド利用料(最大2年分)、導入関連費などが対象。補助額は改善するプロセス数に応じて5万〜450万円(補助率1/2以内)。
- インボイス枠:インボイス制度に対応したソフトウェアに加え、同時購入のPC・タブレット(10万円以下)、レジ・券売機(20万円以下)などのハードウェアも対象。補助額350万円以内(補助率1/2〜4/5)。
募集は年間を通じて数次行われているため、ツールの導入を計画している企業は申請を検討するとコストを大幅に軽減できます。
注目トピック:生成AIから「AIエージェント」への移行
大同生命サーベイの調査結果によると、生成AIの活用状況について「活用したことがない(現在は活用していない含む)」と答えた企業は60%以上に及んでいます。
確かに黎明期にはハルシネーション(事実と異なる情報を返す現象)が問題視されましたが、現在はビジネス実務で安全かつ効果的に活用できるフェーズに入っています。まずは特別なIT知識がなくても利用しやすい生成AIツール(月3,000円程度のプラン)を法人契約して社内展開し、利点と限界を知ることから始めましょう。
さらに自社のデータや知識をフル活用して大きな成果を上げるには、人間の指示に基づいて自律的に複数のタスクを連続実行する「AIエージェント」の導入を検討することをお勧めします。
大同生命『one hour』2026年5月号 掲載情報
本記事でご紹介したインタビューの全文や、他の中小企業の先進的な取り組み事例(高橋建設株式会社様の多角化・地域貢献事例など)は、大同生命が運営する中小企業向け経営情報受発信サイト「どうだい?」にて公開されています。
Web上でお知らせが閲覧できるほか、誌面全体のPDFもバックナンバーとしてダウンロード可能です。ぜひあわせてご覧ください。
- 「どうだい?」5月号発行お知らせ記事:https://dodai.daido-life.co.jp/article/detail/2085
- 「one hour」2026年5月号 誌面PDFリンク:https://dodai.daido-life.co.jp/api/eco-api/v1/file/download/1864
まとめ:過去の成功体験というバイアスを捨てよう
中小企業のDXにおいて、最終的に成否を握るのは経営者の「既存のビジネスモデルを変える」という決意と意識変革です。
多くの中小企業経営者は、従来の常識や慣習に沿って成功を収めてきた実績があります。しかし、その常識は今のデジタル時代においては必ずしも「正解」ではありません。「なぜこの作業をしているのだろう」と常に問いを持ち、従来のバイアスを取り去って新たな知識をどん欲に吸収する姿勢を持つことこそが、時代に合ったビジネスを構想する起点になります。
弊社では、本コラムの内容に関するご質問や、自社に合わせた具体的なDX推進・人材育成のご相談を無償で受け付けております。変革への第一歩を、共に踏み出してみませんか。

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
代表取締役/DXエバンジェリスト
DX推進・企業変革の専門家。豊富な現場経験と実践知をもとにコンサルティング、企業研修、講演活動を行う。
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